【短期集中連載】藤原竜也という才能<3>『カイジ ファイナルゲーム』でアイツが帰ってくる!いまさら聞けないシリーズ総復習
1996年に連載開始し、多くの読者に愛されている人気コミックスを、藤原竜也主演で実写映画化し大ヒットを記録した『カイジ』。藤原竜也の当たり役となった主人公カイジと、実力派俳優たちが演じるクセの強い登場人物が繰り広げる鬼気迫る心理戦、斬新で刺激的なゲーム、観る者の心に突き刺さるセリフなどがシリーズの見どころだ。そして2020年、シリーズ最終回となる『カイジ ファイナルゲーム』(1月10日公開)で、カイジが9年ぶりにスクリーンに帰ってくる!公開を前に、前二作を振り返ってみよう。
第1作『カイジ 人生逆転ゲーム』(09)のカイジは定職にも就かず、自堕落な生活を送っているダメ人間。挙句の果てには、友人の借金の保証人になったことで多額の負債を抱えてしまう。取り立てに来た悪徳金融会社の社長に「一夜にして大金を稼ぐチャンスがある」と甘く囁かれたカイジは、とある豪華客船で開催される“ゲーム”に参加することになるが…。
本作に登場するゲームは、グー・チョキ・パーの絵が描かれた12枚のカードを使う<限定ジャンケン>、高層ビルの間に架けられた鉄骨を命綱なしで渡る<鉄骨渡り>、皇帝・市民・奴隷と3種類のカードを使って1対1で戦う<Eカード>。負ければ地下の強制労働施設で働かされることになるか、はたまた即“死”が待っている過酷なゲームだ。
劇中ではカイジの「悪魔的だ!」「キンキンに冷えてやがるっ!」といったセリフが印象的だが、ほかにも観る者の気持ちを奮い立たせるような登場人物の名スピーチがある。カイジの敵・利根川(香川照之)が、“負け組”の若者たちを前に高らかな声で演説するシーンはまさに圧巻!また、カイジと利根川が一騎打ちを繰り広げる<Eカード>での息が詰まるような心理戦は、観ているこちら側がヒリヒリするほどの迫力だった。
第2作『カイジ2 人生奪回ゲーム』(11)でのカイジは、前作から1年も経たないうちに、またもや多額の借金をつくり地下労働施設へ。カイジの果たすべき役目は、地上に出られる猶予14日の間に、地下の労働仲間全員を解放するだけの金=2億円を稼ぎ出すこと。圧倒的な無理難題を抱え手詰まりになるカイジの前に、前作で対峙した利根川が現れ、裏カジノの存在を教える――。
カイジが本作で挑むのは、一発当たれば10憶円以上を稼げる難攻不落のモンスターパチンコ<沼>。また、3つの檻のうち、ひとつには女性、残り2つにはライオンが入っていて、正しい開閉ボタンを押さないとライオンに食い殺されてしまう<姫と奴隷>というオリジナルゲームも登場した。
ダメ人間ではあるけれど、実は正義感が強く仲間思いであることが、カイジというキャラクターの魅力。立ち塞がる困難な状況に様々な人物と手を組むことで乗り越えていく様子は、1作目から描かれていたが、2作目ではさらに“仲間との信頼”がテーマになり、ギャンブルそのものより“人と人との勝負”といった色合いが強くなった。地下労働施設の仲間はもちろん、かつての敵と手を組んでさらなる脅威に挑む展開にグッときた人は多いはずだ。
そして最新作のは、いま私たちが生きている現実社会とシンクロする。舞台は東京オリンピック後の日本。空前の大不況のなか、派遣会社からクズと罵られ、薄給でこき使われているカイジの前に、かつての地下労働施設の“ハンチョウ”こと大槻が現れる。彼はカイジに、金を持て余した老人が主催する“若者救済イベント”の話を持ち掛けるが、それは危険な戦いの幕開けだった。
シリーズで初めて、原作者・福本伸行が脚本を手掛けた完全オリジナルストーリーとなる本作。<バベルの塔>、<最後の審判~人間秤~>、<ドリームジャンプ>、<ゴールドジャンケン>という、原作にはない4つの新作ゲームが登場する。最終回だけに、ファンをニヤリとさせる要素もいっぱい。また、<鉄骨渡り>や<姫と奴隷>など、観る者をゾッとさせてきた命懸けのゲームが今作でも登場。集められた10人が、10本中1本しか機能していない命綱をつけて飛び降りるデスバンジー<ドリームジャンプ>は、まさに生死の懸かった究極のギャンブルだ。
命と人生を懸けた絶体絶命のギャンブルに身を投じ、極限状態に追い込まれた時にこそ抜群の強さを発揮するカイジ。そんな役を、ここまで熱くエネルギッシュに演じられる俳優は藤原竜也しかいないと改めて実感させられる。平成から令和へと移り、先行きが不透明なこの時代をどう生きていくのか。カイジが投げかけるメッセージを、しかと受け止めてほしい!
文/石塚圭子
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