100年以上前のカメラを使用!?大正時代を再現した『カツベン!』のこだわりが半端ない!<写真17点>
映画に音がなかった時代に映像に合わせた説明をし、人気を博していた“活動弁士”。いまとなってはあまり知られてない彼らの姿に周防正行監督がスポットを当てた『カツベン!』が、12月13日(金)より公開される。およそ100年前、大正期の日本を舞台とした本作には、当時の様子を完全再現した小道具やセットなど、細部の美術にもこだわりが満載となっている。
本作は、泥棒一味を抜けて流れ着いた小さな町の活動写真小屋・靑木館で住み込みの雑用係として働くことになった青年の俊太郎(成田凌)が、ライバル館の隆盛や過去の因縁、色恋沙汰など様々な問題に巻き込まれながらも、子どもの頃からの夢である一流の活弁士を目指し奮闘するというものだ。
約3年間かけて、無声映画を鑑賞したり、古い映写機や大正時代の映画ポスターなどを蒐集したり、さらには当時の映写技術を取材したりと、徹底的に時代の研究を行なったという周防監督。そんな監督をも唸らせたのが、美術の磯田典宏の手により、東映京都撮影所内のオープンセットに再現された大正時代の町の風景だ。和服や洋服を着たエキストラが入り乱れ、レトロな色彩ののぼりが並ぶ大正ならではの町並みは、当時を知らなくてもその暮らしぶりがこのようなものだったと納得できるようなリアルさを帯びているのだ。
そんな町の中心にあるのが、物語の舞台となる靑木館。特にこだわりが詰まっているのがその内部だ。大正時代を再現できる場所を探し求め全国津々浦々でロケーションを敢行したという本作、撮影には福島の旧廣瀬座という明治20年から存在する国指定重要文化財が使用されている。この建物、元々は芝居小屋で、定式幕や桟敷、花道といった設備はそのまま用い、そこに木製のスクリーンを立て、提灯を吊ったりと美術で装飾を施すことで当時の活動写真小屋を再現。そんな歴史ある本物だからこその雰囲気にはキャストたちも「すばらしい!」と声を上げたそうだ。
さらに映画の冒頭の大正時代の映画撮影風景のシーンでは、小道具として“映画の父”リュミエール兄弟も使用したという1895年に実在したカメラを用意。映写室にはジャッキー・クーガン主演の映画『ダディー』(23)や『ノンキナトウサン 活動の巻』(25)のポスターが飾られていたりと、チラッとしか目に入らないようなものにまで気が配られおり、画面のどこを見ても現代を一切感じさせない抜群の完成度となっているのだ。
これらのセットや小道具は、『カツベン!』の公式Twitterにもしばしば投稿されており、レトロな雰囲気が若い映画ファンの間でも話題を集めている。そんなこだわり抜かれた美術によって醸しだされる、まるで大正時代にタイムスリップしたかのような時間を、ぜひこの作品で味わってみてはいかがだろうか。
文/トライワークス