「男はつらいよ」22年ぶりの新作、撮影現場に潜入!吉岡秀隆&後藤久美子が明かす“お茶の間“秘話

コラム

「男はつらいよ」22年ぶりの新作、撮影現場に潜入!吉岡秀隆&後藤久美子が明かす“お茶の間“秘話

「男はつらいよ」シリーズの50作目となる最新作『男はつらいよ お帰り 寅さん』(公開中)。4Kデジタル修復されてよみがえるシリーズ映像と、新撮された登場人物たちの“いま”が見事に溶け合い、心揺さぶる1作となった。シリーズの最新作が登場するのは、『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』(97)以来、実に22年ぶりのこと。さくらや博、満男、イズミはどのように年齢を重ねているのか。気になる思いを抱え、Movie Walkerでは山田洋次監督のもとでスタッフ、キャスト陣が撮影に励む現場に潜入。満男役の吉岡秀隆、イズミ役の後藤久美子がシリーズに帰還した感想と共にお届けする。

みるみるうちに豊かなシーンが出来上がっていく
みるみるうちに豊かなシーンが出来上がっていく[c]2019松竹株式会社

日本中を旅する主人公の車寅次郎、通称“寅さん”(渥美清)が故郷の柴又に帰ってきては、家族や恋したマドンナを巻き込み、騒ぎを起こすさまを描く本シリーズ。記者が訪れたのは、家族団欒のお茶の間のシーン。寅さんがメロンをめぐって説教を始める“メロン騒動”や、運動会観戦に向けて「フレッフレッ、満男ー!」と張り切ったり、家族の前で旅先の出来事を聞かせるお馴染みの場面など、数々の名シーンが生まれたお茶の間は、大船撮影所時代から使われてきた建具が一部持ち込まれ、当時の雰囲気を再現。土間へと降りる段差に手すりがつけられていたり、お茶の間からつながる団子屋「くるまや」は今流のカフェへと変化しているなど、“時の流れ”も盛り込まれたセットだ。

そこに寅さんの妹さくら役の倍賞千恵子、甥っ子の満男役の吉岡、さくらの夫、博役の前田吟、満男の初恋相手、イズミ役の後藤が顔を揃える。満男は小説家として生計を立てながら、中学3年生の娘と暮らしている。さくらと博は、すっかり老夫婦となった。イズミは海外で暮らしているが、仕事で来日中。年齢を重ねた彼らが鍋を囲みつつ、寅さんの思い出話に花を咲かせるシーンの撮影が始まる。

山田監督が「やってみよう」とタクトを振るえば、すぐさまさくら、博、満男、イズミとしての会話がスタート。山田監督は必ず役者のそばまで足を運び、細かく丁寧に演出を加えていく。役者陣が“打てば響く”といった様子で監督の要望に応え、みるみるうちに豊かなシーンが出来上がっていくさまは鳥肌モノ。会話のテンポも心地よく、お茶の間にファミリーの笑い声が響く。そこに寅さん、おいちゃん、おばちゃん、タコ社長がいないのがさみしくなるが、その郷愁もこれまでの49作があるからこそ生まれるもの。現場取材からも、本作が特別な1作であることを実感した。

【写真を見る】吉岡秀隆&後藤久美子が再会!笑顔で撮影を振り返った
【写真を見る】吉岡秀隆&後藤久美子が再会!笑顔で撮影を振り返った撮影/黒羽政士

撮影の合間は倍賞、吉岡、前田、後藤が楽しそうに談笑する姿がよく見受けられた。後日、吉岡と後藤を直撃すると、「撮影はもちろん緊張感があったんですが、お茶の間のシーンの合間は、なんだかすごく笑っていた気がする。ものすごく楽しかったのを覚えています」と吉岡。後藤も「倍賞さんと吟さんが『よく喋る人は元気なのよ』なんていう話をしていて、私たち二人はとにかく笑っていましたね。倍賞さんと吟さんの声が聞こえるのが、とても心地よかった」とニッコリ。

さらに吉岡は「今回のお茶の間には、おいちゃんもおばちゃんもタコ社長もいないんですが、そこにマドンナの方が座るとお花が一輪、ポンと咲いたような感じになるんです。マドンナの方がいるといないでは、お茶の間のにぎわい方が違う。だから今回のお茶の間のシーンに久美子ちゃんがいたのが、すごくよくて」とお茶の間シーンへの想いを吐露。

後藤は「あのシーンを撮影しながらも、寅さんに会いたいなと思いましたね。撮影の合間には倍賞さんが『渥美ちゃんがね』と、まるで昨日会ったばかりというぐらいの感覚で話されていて、『ああ、ステキだな』と思いました」と寅さんに想いを馳せつつ、「私にとっては、23年ぶりの女優としてのお仕事。すべてが懐かしく、新鮮で、本当に楽しかったです。私のママを演じている夏木マリさんも『さすが!』と言った感じでした」と再会に喜びをにじませていた。

取材・文/成田 おり枝

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