【今週の☆☆☆】M・デイモン&C・ベイルの初共演作『フォードvsフェラーリ』やポン・ジュノ監督の怪作『パラサイト 半地下の家族』など週末観るならこの3本!
Movie Walkerスタッフが、この週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、1月10日(金)から今週末の公開作品をピックアップ。マット・デイモンとクリスチャン・ベイルがモータースポーツ界の頂点を目指す男たちを演じる熱いドラマや、韓国初のパルムドール監督であるポン・ジュノのブラックコメディ、飯豊まりえ主演の新世代Jホラーなど、バラエティあふれる作品ばかり!
困難な状況に挑む、2人の男のプライドを賭けた戦い『フォードvsフェラーリ』(1月10日公開)
イタリアを代表するスポーツカーメーカーとして先鋭化したフェラーリ、アメリカで大衆車から高級車まで幅広く生産し巨大企業化した自動車メーカーのフォード。本作は、1960年代の実話をもとに、企業買収を巡る決裂をきっかけに、世界一の耐久レースである「ル・マン24時間」で2社が対決するまでの流れを描いている。しかし、ドラマの本質となるのは、フォードからの依頼でレースに勝つためのマシンの開発に携わった、2人の男の友情と挑戦。レーサーから引退し、カーデザイナーとなったキャロル・シェルビー(マット・デイモン)と彼に見出された天才的なレーサーのケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)は、絶対王者であるフェラーリに勝つためのマシン“フォードGT40”の開発に心血を注ぐが、次第に企業としての横暴を振りかざすフォード上層部との確執が生まれていく。レースへの勝利という目標と依頼主である巨大企業からの無理難題という2つの課題に対し、下の立場ながらもプライドを賭けて挑む熱き男たちの姿には、きっと強い親近感を持つ人も多いだろう。その背景となる徹底して作り込まれた60年代の風景とスピード感あふれるレースシーンは、そんな男たちの困難な闘いへの没入感をさらに高めてくれるはずだ。(映画ライター・石井誠)
ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞を獲得!現代社会を映しだす『パラサイト 半地下の家族』(1月10日公開)
世の中がギスギスしている。『ジョーカー』(19)が大ヒットしたことも、クソみたいな世の中で這い上がることができない鬱屈を、ジョーカーという存在が具現化してくれていたからだろう。そして韓国の名監督ポン・ジュノによる『パラサイト 半地下の家族』も、社会の泥沼が人間の形になったような家族が主人公だ。彼らはどん底生活から抜け出すために、裕福なある家をターゲットと見定め、身分を偽って雇われる計画を進める。家庭教師、運転手、家政婦、次々と雇われる面々が、実は全員血のつながった家族なのだ。そんな壮大な詐欺行為を、予測不能なブラックコメディに仕上げた手腕が見事。ポン・ジュノ監督はあくまでも“韓国の現実”を描いたつもりだったというが、ゴールデン・グローブ賞で外国語映画賞に輝いたことも、いまの世界を象徴する作品に仕上がっているという証拠だろう。クソみたいな世の中を怒りを持って笑い飛ばす、われわれ庶民のために生まれた怪作である。(映画ライター・村山章)
不気味なビジュアルの新たなホラー・キャラクターが誕生…『シライサン』(1月10日公開)
『リング』(98)の貞子や『呪怨』(03)の伽椰子を思わせる新たなホラー・キャラクター、その名もシライサン。人気作家、乙一が長編初監督に挑んだ本作は、この怨霊にフォーカスする本格派のオカルト・スリラーだ。怪談を聞き、その名を知った者につきまとうシライサン。大学生の男女が、迫りくる死の運命に抵抗する。シライサンの不気味なビジュアル、眼球の破裂による死という呪われた者たちのおぞましい最期などの描写は、まさにショッキング。ユニークなのはシライサンが“見られる”ことを要求するキャラであることで、承認欲求がSNSに表れる現代の若者たちが狙われることを踏まえると、深みも見えてくる。そういう意味では、まさしく“新世代ホラー”なのだ!(映画ライター・有馬楽)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス