未曾有の原発事故を壮大なスケールで描く「チェルノブイリ」と『Fukushima 50』の共通点とは?
先日発表された第77回ゴールデン・グローブ賞のリミテッドシリーズ/テレビムービー部門で作品賞と助演男優賞を獲得した海外ドラマ「チェルノブイリ -CHERNOBYL-」のDVDが3月4日(水)よりレンタル開始される。本作は1986年4月26日未明に起きたチェルノブイリ原発事故で、旧ソビエト政府が事態を隠蔽しようとするなか、被害の拡大を抑えようと戦った英雄たちの姿を描いた緊迫のノンフィクションドラマだ。
世界中で社会現象を巻き起こした「ゲーム・オブ・スローンズ」のHBOが製作を務め、アメリカの大手レビューサイト「Rotten Tomato」で96%を獲得するなど高評価を獲得。昨年9月に発表された第71回プライムタイム・エミー賞では圧巻の19ノミネートを果たし、最多10部門を受賞。
旧ソビエト政府に調査を委任された科学者を演じたジャレッド・ハリスをはじめ、エネルギー部門の責任者として現場の対応を任されたソ連閣僚会議の副議長を演じたステラン・スカルスガルド、そして真相解明に奔走する核物理学者を演じたエミリー・ワトソンといった名優たちが繰り広げる重厚感たっぷりの熱演も大きな話題を集めた。
「チェルノブイリ」のような未曾有の原発事故は、日本でも決して他人事ではない。2011年3月11日に発生した東日本大震災によって起きた福島第一原発事故から9年を迎えようとしているなか、3.11の関係者90人以上への取材をもとに綴られた門田隆将のノンフィクション作品を、『沈まぬ太陽』(09)の巨匠・若松節朗監督が映画化した『Fukushima 50』が3月6日(金)より公開される。
日本の観測史上最大の地震によって想像を超える被害をもたらした原発事故の現場に残り、世界のメディアから“Fukushima 50”と呼ばれた地元福島出身の作業員たちの姿を描いた本作。佐藤浩市と渡辺謙をはじめ、日本映画屈指の演技派俳優が集結。あの時現場では一体なにが起きていたのか?東日本壊滅の危機が迫るなか、自らの死を覚悟しながら発電所内に残った人々の知られざる真実が明らかにされていく。
34年前に旧ソ連、現在のウクライナで起きた原発事故を描いた「チェルノブイリ」と9年前にここ日本で起きた原発事故を描いた『Fukushima 50』。両作の共通点は“原発事故”という題材だけに留まらない。映像作品としての類稀なるスケール感と同時に、圧倒的なリアリティが追求されていることも見どころのひとつ。前者はすでに廃炉になった本物の原子力発電所でロケを敢行。後者はまだ生々しい記憶が残る未曾有の出来事に対し、すべてのスタッフ・キャストが強い覚悟を持ってテーマと向き合ったことが、完成した作品からひしひしと伝わってくるはずだ。
震災からの“復興五輪”とも謳われている東京2020オリンピック・パラリンピックを前に、この2作品を通して決して風化させてはいけない歴史の真実に触れ、いまだ多くの課題が残る“原発”という存在について考え、そして多くの命を救うために奔走した英雄たちに想いを馳せてみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬