佐藤浩市と渡辺謙が『Fukushima 50』ワールドプレミアに登壇!世界的ヴァイオリン奏者、五嶋龍らの生演奏も
東日本大震災時の福島第一原発事故と向き合った人々の物語『Fukushima 50』(フクシマフィフティ) (3月6日公開)のワールドプレミアが、1月26日に東京国際フォーラムで開催され、佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、緒形直人、平田満、萩原聖人、佐野史郎、安田成美、若松節朗監督が登壇。佐藤は「記録としても記憶としてもこの映画は残るであろう、そう思っています」と力強く手応えを語った。
オープニングアクトとして、音楽を担当した岩代太郎指揮の下、本作で映画音楽に初挑戦した世界的ヴァイオリン奏者の五嶋龍と、チェロ奏者の長谷川陽子が、東京フィルハーモニー交響楽団、NHK児童合唱団と共に、劇中の3曲を披露。観客がその世界観に酔いしれた後、佐藤たちゲストが登場した。佐藤は渡辺と顔を見合いながら「舞台袖で2人で握手をして出てきました」を目をうるませた。
原作は、門田隆将のノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫刊)。映画は、東日本大震災での福島第一原発事故当時、死を覚悟して現場に残った、地元福島出身の名もなき作業員たちの真実を描く。タイトルは、彼らが世界のメディアから“Fukushima 50”(フクシマフィフティ)と呼ばれたことにちなむ。
プレミアに先立ち、1月23日には郡山で、24日に仙台で上映され、渡辺や若松監督と舞台挨拶に登壇したことを報告した佐藤。
「まずは福島の方々に観ていただかなければ始まらないと。それは我々にとって非常に怖いこと。いま、公共の電波では、津波の映像が流れる前に『これより津波の映像が流れます』というテロップがなければ流すことができません。それくらいメンタルに対するケアが必要です。映画は暗い劇場で、とても辛い映像を強いなければいけないカットやシーンがあるわけです。でも、それを乗り越えて、エンディングまでいった時、必ずやなにかが残る、そういう映画だと思って、まず福島に持っていきました」と覚悟を明かした。
渡辺も「当時、高校生だった方がいま、テレビ局のアナウンサーになっていて、この映画を観てくれました。最初に震災の津波のシーンを観た時、体の震えが止まらなかったと言っていて。途中で心が折れそうになったけど、最後まで観てもらったら、『若い世代の方にとって、一体、震災の事故はなんだったのかということを初めて知ることができました』と言ってもらえました」と報告した。
ほぼ順撮りで撮っていったという本作は、撮影も過酷を極めたそうだが、佐藤は「あの結束感は、普通の映画ではないことでした」と述懐。吉岡も「撮影が終わったあと、マスクを取ったら、皆が老けていました。皆、へとへとになるまで、生気を吸い取られるような感じで必死でした」と、緒方も「撮影でオンオフの切り替えがあると言いますが、まったくオフがなかった」と告白。
紅一点の安田も、現場では緊張のしっぱなしだったとか。「どうしたらいいんだろうとい気持ちばっかりだったけど、なんとか役目は果たせたかなと。でも、本当に参加できて良かったです。できあがりを観て、映像で伝えるすばらしさを感じられたので。皆さん、絶対観なきゃダメだと伝えてほしい」と観客に呼びかけた。
また、『Fukushima 50』は世界の73の国と地域で上映されることが発表された。渡辺は「本作がなぜ『Fukushima 50』と、英語表記となっているのか。世界に向けて届けるためです。この映画を観ていただいて、こんな男たちが世界を救ったのかもしれない、という想いを世界に届けてくれたら」と言うと、佐藤も「災害というものはいつも深い傷跡、爪痕を残します。でも、その負の遺産を、明日への遺産に変えられるよう、皆さん、祈ってください」と力強く締めくくった。
取材・文/山崎 伸子