【第92回アカデミー賞】韓国映画史上初の快挙!監督賞は『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ
現地時間2月9日(日本時間10日)にハリウッドのドルビー・シアターで開催された第92回アカデミー賞授賞式。監督賞は『パラサイト 半地下の家族』(公開中)のポン・ジュノ監督に輝いた。
『パラサイト 半地下の家族』は、全員失業中で半地下の部屋に暮らす貧しいキム一家が、高台の大豪邸に暮らす裕福な一家に“寄生”=パラサイトしていく姿をブラックユーモアとサスペンスを交えて描く人間ドラマ。ネタバレ厳禁の予測不能な展開で観客を魅了するだけでなく、格差社会の実情までもを描き切り、世界各国で記録的なヒットを飛ばしている。日本国内の動員は100万人を突破しており、興行収入も14億円を超えた。
信じられないといった面持ちでステージに上がったジュノ監督。「小さなころに英語の勉強をしていて、心に刺さった言葉がある。『最も個人的なことが、最もクリエイティブなことだ』。これはマーティン・スコセッシの言葉です」と会場にいたスコセッシ監督に感謝。会場も総立ちとなって称えると、スコセッシ監督は照れくさそうな笑顔を浮かべた。ジュノ監督は「スコセッシ監督と一緒に候補になっただけで、光栄です」と語り、さらに「私の映画をアメリカではまだ誰も知らなかったようなころから、リストに挙げてくれたクエンティン・タランティーノ監督。本当に愛しています」とタランティーノ監督にも愛のメッセージ。タランティーノもピースサインで応えるなど、尊敬の念あふれるスピーチに会場からも大きな拍手が上がっていた。
“韓国の鬼才”と言われるポン・ジュノ監督は1969年生まれ、韓国出身の50歳。韓国映画アカデミー卒業後、『殺人の追憶』(03)、『グエムル 漢江(ハンガン)の怪物』(06)、『母なる証明』(09)などで国内外の人気を不動のものにし、『スノーピアサー』(13)で初の英語劇を監督。その後もNetflix映画『オクジャ okja』(17)などで、オリジナリティあふれる映画を次々と発表している。
盟友ソン・ガンホと4度目のタッグを組んだ本作は、第72回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。韓国映画として初の同賞受賞という歴史的快挙を成し遂げ、その後も各国の映画祭を席巻。今年のアカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞、美術賞、編集賞、国際長編映画賞の計6部門にノミネートされ、アジア映画が作品賞にノミネートされるという、史上初の快挙を果たすなど、爆発的な盛り上がりを見せている。
文/成田 おり枝