“闘う女性クリエーター”の先駆け「若草物語」ルイーザ・メイ・オルコットの革新性<写真11点>
150年以上も前に刊行されながらも、いまだ世界中で愛され続ける「若草物語」。2020年初夏にこのベストセラー小説を映画化したアカデミー賞受賞作『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』も公開される。本日3月6日はそんな名著を生みだした、原作者ルイーザ・メイ・オルコットの命日ということで、あらためて彼女の功績を振り返っていきたい。
「若草物語」は19世紀後半のアメリカを舞台にマーチ家の4姉妹の成長をつづった物語。オルコット自身がモデルとなっている次女ジョー(シアーシャ・ローナン)が、女性が社会で活躍することが難しい時代に強い意志を持って小説家を目指していく姿を描いている映画からもわかるように、テイラー・スウィフトなどの女性アーティスト、クリエーターたちが著作権を声高に主張したり、セクハラ疑惑“Me Too運動”がハリウッドから始まったりと、現在の“アメリカは発言と自己主張ができる国”の流れの源流となったと言っても過言ではない作品。オルコットは言わば、アメリカにおける“闘う女性クリエーター”の先駆け的存在だったのだ。
当時としては先進的だった彼女の考え方は、いまでは“アメリカンデモクラシーの発端”とも言われる「超絶主義」の信奉者で、アメリカ思想史にもいまだ名を留める教育者であり牧師であった父親ブロンソン・オルコットによるところが大きいとされている。
“個人”を絶対的に尊重することで知られる「超絶主義」だが、奴隷制度などがまた残っていた当時のアメリカ社会においては急進派。結果や理想を求めるあまり現実的な生活力はほぼ皆無に等しかったため父親とその家族は28年間の間に29回も引っ越しを余儀なくされることになったのだそう。その間に父親と深い親交のあった思想家たちラルフ・ワルド・エマーソン、ヘンリー・デイヴィッド・ソロー、ナサニエル・ホーソーンらと交流を持つという変わった少女時代を過ごし影響を受けたオルコット。彼女が働く女性が蔑まれる時代にもかかわらず、“自分が自分らしくあること”の大事さを根底にちりばめながら創作された「若草物語」を描くに至ったことは想像に難しくない。
現在のアメリカの指導者的立場・クリエーターにある女性たちに幼少期の愛読書について尋ると「若草物語」の名前が必ずといっていいほど上がると言われており、本作を手掛けたグレタ・ガーウィグ監督もその一人。あらためて読み返した際に「そのまま現代の物語になっても全く違和感がない」ほど、とても現代的な物語であったことに驚いたという。
「『若草物語』といえば(1冊目の)少女時代の話が有名。でも続く2冊目の物語では、成人した姉妹が世に出て自分らしく生きようとする。姉妹・芸術家・母親・労働者という役割を持ち、さらに友人や妻として奮闘する姿が描かれていて、いま読むとその姿に強い魅力を感じたわ」と語るガーウィグ監督。大人になった姉妹たちが試行錯誤しながら人生を進んでいく物語を映画を通して描くことで「この本がくれる勇気も届けたい」「あの作品から創造の力を得てほしい」と現代の新たなクリエーターたちへのメッセージも送っている。
映画でも力強く描かれている、現代にも通じるメッセージが込められたルイーザ・メイ・オルコットの名著「若草物語」。未読の人はもちろん、すでに読んだことがある人も、これを機に手に取ってみてはいかがだろうか?
文/トライワークス