『星守る犬』初日にサプライズ! 西田敏行「感動して涙出ちゃった」
村上たかしの人気漫画を映画化した感動作『星守る犬』が6月11日(土)公開初日を迎え、主演の西田敏行をはじめ、玉山鉄二、川島海荷、瀧本智行監督が舞台挨拶を行った。イベント後半には、サプライズゲストが現れ、会場を沸かした。
ある夏、山中に放置された車から身元不明の中年男性と犬の遺体が見つかる。男性の遺体は死後半年を経過していたが、犬の遺体は死後1ヶ月しか経っていないことが判明。市役所の福祉課に勤める奥津京介(玉山鉄二)は、偶然出会った少女・有希(川島海荷)と共に、死んだ男と犬を調査するため、彼らの道のりをたどる旅に出る。
東日本大震災からちょうど3ヶ月が経ち、福島県出身の西田は、「この映画は東北の方たちにも大変お世話になり、私の故郷・福島もたくさんの方々にご支援いただき、本当にありがとうございます。また居心地の良い日本にするために頑張っていきましょう」と挨拶。「お父さんは子供たちが思春期になるとうざったいと思われたくなくて、ちょっと引く。寛容な親父になるけど、それがきっかけですれ違っていく。岸本加代子さんから離婚届を突きつけられた時は戦慄が走りました。女の人が決断を下すととりつく島がないんですね(笑)」と素直な気持ちを話し、観客を笑わせた。
西田扮する男性と愛犬ハッピーの旅路をたどる市役所職人・奥津を演じた玉山は、「奥津は感情がなだらかで抑揚の少ない役でしたが、映画を見ていただいて、奥津という役が完成すると思っていました。ちょうど1年前、北海道の名寄でクラインインし、たくさんの東北の方たちにお世話になりました。映画を見て、美しい景色を目に焼きつけてほしいです。そして復興に一日でも近づくことができたら嬉しく思います」と話し、達成感からか思いがこみ上げてきた様子で涙をにじませた。また、幼い頃から犬を飼っていたという玉山は、今回本作と出会ったことで犬との信頼関係を実感したようで、「どんな悪人だろうが、駄目な人間でも、犬は飼い主の人格を否定することはない。人間がそれをもっと受け止めてあげれば、もっと良い関係性と愛情が深く育まれると思います」と、犬を飼うことの大切さを語った。
奥津と共に旅をする少女・有希を演じた川島は、「この映画はロードムービーで、撮影中は私たちも旅をしているような気分で楽しく過ごしました」と撮影を振り返り、来週に控えた父の日に向けて、「私はお父さんと仲が良くて、買い物や食事にもよく行きますが、たまに反抗してしまう時もあります。映画を見て『その時はごめんね』という気持ちと、『いつもありがとう』という気持ちになりました。全国のお父さんの皆さんもお仕事とか大変だと思いますが、私と同年代の方たちも、お父さんに感謝の気持ちを伝えてほしいと思います」と語った。
本作のメガホンをとった瀧本監督は、「高校時代、家にクロという犬がいました。当時は受験勉強や部活動などで、ほとんど愛情を向けることがありませんでしたが、クロが亡くなった時は、空っぽの犬小屋を見て、罪悪感ややましい思いを感じました。この映画の原作を読んだ時、当時の記憶がまざまざとよみがえってきて、是非映画にしたいと思いました。公開日を迎えることができて本当に嬉しいです」と、映画に込めた思いを語った。
全国7ヶ所で行われたキャンペーンにフル出演した西田。そんな西田と日本中のお父さんにエールを送るべく、舞台挨拶後半には、サプライズゲストとし水前寺清子が登場。観客の間を「三百六十五歩のマーチ」を歌いながらステージへと登壇し、キャストと共に名曲を熱唱した。映画のイベントなどで歌うことは初めてだという水前寺は、「動物たちは言葉は言えませんが、人間と同じ気持ちを抱いているんだなと、改めて教えていただきました。大変感動しました」と映画の感想を語り、西田にひまわりの花束をプレゼント。西田は「水前寺さんが出てきた時は、感動して涙出ちゃった。ありがたいな。お父さんやっていて良かった!」と達成感に満ちあふれた表情を見せ、会場は温かな空気に包まれた。
愛犬家はもちろん、多くの人々の涙を誘った原作の映画化とあって注目の高い本作。お父さんと飼い犬ハッピーの旅の終着点を是非とも劇場で見届けてほしい。【取材・文/鈴木菜保美】