全米の3月興行収入は過去最低の非常事態…月間首位は6年連続でディズニー作品に
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、全米では3月中旬から多くの映画館が閉鎖となる事態に。そんななか、Box Office Mojo調べによる3月の全米月間興行収入が前年比73.7%減の2億5332万6412ドル(約276億円)と発表された。
3月の月間興収としては2億4960万2575ドルだった1988年に次ぐ低水準だが、現在の貨幣価値に直せば同月は5億ドル(約544億円 )前後。また記録が残っている1982年以降、数字上の最低は1億4571万1329ドルの1985年10月。同月が現在の貨幣価値で3億8000万ドル超(約414億円)となることからも、この3月は事実上最低の“非常事態”と言えるだろう。
例年3月の全米興行は、アカデミー賞が終わり(その結果によって受賞作品や候補作品が再び息を吹き返すことも)、イースターの週末に向けた家族向け作品や、賞レースとは縁遠いがそれなりの規模を誇る娯楽映画が相次いで公開される時期。いわば年間でいちばんの書き入れ時となるサマーシーズン前のプレシーズンとも位置付けられる重要な時期の一つである。
しかし、今年は急速に全米に蔓延していった新型コロナウイルスの影響と、3月16日にトランプ大統領から発表された行動指針によってその様相は一変。大手映画館チェーンは相次いで6週間から12週間にわたる映画館の閉鎖を発表。また、3月20日に公開を予定していた『クワイエット・プレイス PART II』や、27日に公開を予定した『ムーラン』などが公開延期となり、結果的に20日の週末興収は全体でわずか3920ドル。前年同時期の週末には1億5000万ドル近くを売り上げていたので、その下落具合は一目瞭然だ。
そうした映画界の“非常事態”となった3月の月間興収ナンバーワンに輝いたのは、ディズニー/ピクサーの最新作『2分の1の魔法』。日本では3月13日の公開が延期となった同作は、全米では春シーズンの先陣を切るように3月6日に公開。初週末こそ4000万ドル弱の興収を記録したが、翌週には1000万ドルほどまで急降下。現在までの興行収入は6155万ドルで、ディズニー/ピクサー作品史上過去最低という憂き目を見ることに。それでもディズニー作品は『シンデレラ』(15)以降、6年連続で3月の月間首位を獲得することとなった。
同作をはじめ、ユニバーサル作品の『透明人間』(5月1日公開)やワーナー・ブラザース映画の『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(公開中)など、全米の各スタジオは映画館の閉鎖を受けて新作映画をVODで配信することを速やかに決定。期せずして、近年の映画界を騒がせるVODサービスに拍車がかかることになるだろう。
本来であれば、全米では来月5月ごろから超大作がひしめき合うサマーシーズンがスタートするのだが、その先陣を切る予定だった『ブラック・ウィドウ』をはじめ、目玉作品のほとんどがすでに公開延期が決定している。それに伴って、年内の興行スケジュールは混沌とした状態になり、来年のアカデミー賞を見据えた作品にも影響が。一体いつになれば映画界は元通りになるのか。残念ながら、その見通しはまだ立っていない。
文/久保田 和馬