今、中東問題を考えることの意味とは? パレスチナを舞台とする映画が3作公開
長年に渡って領土を巡る激しい争いが続いている中東・パレスチナ。ここ日本でも連日報道は行われているが、様々な思想や問題が複雑に絡み合っているため、現状を正確に理解、把握するのは非常に困難だ。それどころか「どこか遠い別世界の出来事」として、正直なところ、実感を持てずにいる人も多いのではないだろうか。そんな中、この夏、パレスチナを舞台にした映画が立て続けに公開されている。
その映画とは、現在公開中の『いのちの子ども』『ミラル』『ぼくたちは見た』の3作品だ。『いのちの子ども』は、対立しているイスラエルとアラブの両者を見つめたドキュメンタリー。余命を宣告されたパレスチナ人の赤ん坊を救おうとするイスラエル人医師に密着し、民族や宗教の違いを越えて協力し合う姿を映し出している。『ミラル』は、紛争で焼け出された孤児たちに生涯を捧げた女性を描く感動のドラマ。『潜水服は蝶の夢を見る』(08)のジュリアン・シュナーベル監督が、『スラムドッグ$ミリオネア』(09)の女優フリーダ・ピントを主演に起用し、不条理な世の中に生きる子どもたちの、生の歩みを紡ぎ出していく。そして、『ぼくたちは見た』は、イスラエル軍による攻撃を受け、家族を失ったパレスチナ・ガザ地区に住む子どもたちが、懸命に生きる姿をとらえたドキュメンタリー。日本人ジャーナリストの古居みずえが、厳しい現実を乗り越え変化していくガザの子どもを温かく見守る眼差しが印象的な作品となっている。
劇映画、ドキュメンタリーと形式の違いはあれど、戦争という大人の事情に振り回される無力な子どもの姿と、その命の尊さが描かれているという点は3作品に共通しており、いずれも独自のアプローチで「いま知るべき中東・パレスチナの真実」を伝えようとしている。我々、日本人は東日本大震災という、多くの尊い命が大自然の猛威に飲み込まれる未曾有の災害に直面しただけに、人間どうしが争うことで犠牲者が出ることの無念さがいかほどか、十分理解できるだろう。そして、人為的な悲劇だからこそ、希望に向けて真摯に取り組んでいく責任があるのではないだろうか。
あまりにも厳しい現実から、国際社会に生きていることをつい忘れてしまいがちな昨今。だが、日本の復興を願う支援や声援が、かのパレスチナをはじめとする中東諸国からも届いていることを是非とも思い出してほしい。遠く離れた国々からの温かい気持ちに応えるためにも、中東問題などについて正しく理解し、自分たちにできることを考えなくてはいけないだろう。【トライワークス】