“生きる意味”を問うマキノ監督を絶賛!――旭山動物園・小菅園長インタビュー
日本最北に位置する北海道旭川市の旭山動物園。ここは、東京の上野動物園を凌ぐ人気と観客動員数を誇っている。秘密は、“行動展示”という動物本来の野性の魅力を活かした独自の展示スタイルだ。それが『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』として、初めて映画化された。西田敏行扮する園長のモデルになった小菅正夫園長本人が、完成した映画の魅力を語ってくれた。
「映画はもう4回観たけど、いつも同じお墓のシーンで泣かされるんだ。これは旭山動物園のサクセス・ストーリーではないよ。人間を賛美するドラマ。僕らがやった事実を、時間軸を圧縮したり話をオーバーにしたりしてデコレートしながら、津川さん(マキノ雅彦監督)が“人とは何か”“生きる意味とは何か”というメッセージをしっかり描いている。終盤に西田さんが、『弱者を受け入れない野生動物と違って、人間は異端を個性として育み、素晴らしい人間社会を築いてきた』と言う。あれは僕じゃなく、津川さんのセリフ。僕らを取材して、“これこそ人間の叡智”と思った津川さんは凄い!」
この映画は、俳優の津川雅彦が“マキノ雅彦”名義で撮った作品。小菅園長は、マキノ監督へ惜しみない賛辞を贈る。だが一方で、環境省に対しては手厳しい。「今は6500万年前に起きた恐竜絶滅以上の大絶滅時代。トキが絶滅したでしょ。もし動物園で飼って繁殖させていたら、まだ日本中に400羽以上はいたはず。中国に頭を下げて貰ってくる必要もなかった。イリオモテヤマネコやシマフクロウだって野生のままだと、いつ滅びるか分からない。いまだに19世紀の感覚で、人間が獲りさえしなければ増えると思ってるんだから。国には、もっと責任を持て!と言いたいね」
そう熱く訴える小菅園長をはじめ、飼育係たちの情熱と発想が生んだ“行動展示”を、ぜひ北海道で体感してほしい。小菅園長は言う。「人間はいろいろと迷うけど、動物を見てご覧なさい。“生きるとは何なのか”を動物と話してみてください。動物は確実に答えてくれるから。その会話が出来るのは、動物園だけだよ」【取材・文/外山真也】