手作り風車で村中に明かりを灯そうとする男の姿に見る、本当に豊かな生活とは?

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手作り風車で村中に明かりを灯そうとする男の姿に見る、本当に豊かな生活とは?

中央アジアの南部、中国の西部に位置する山と草原の国、キルギス共和国。中央アジアのスイスとも称され、風光明媚で知られるこの地の小さな村を舞台に、純朴な電気工の男が風力発電で村中に光を灯すまでを描いた人間ドラマ『明りを灯す人』が10月8日(土)より公開されている。

村人たちから“明り屋さん”と呼ばれる、村でたった一人の電気工は、村人たちのことを第一に考え、皆から愛される純朴な男だ。アンテナの調節や電気の修理など、どんな些細なトラブルにも対応してくれ、時には電気代が払えない貧しい人のために、無料で電気が送られてくるよう違法な細工を施してしまうことも。自力で風車をたくさん作って、村中の電力を賄うことを夢見ている、そんな彼の優しげな姿や、小さな村ならではの温かみにあふれた人々の交流、そしてゆったりとした時間の流れに癒される。

だが、映画は牧歌的な日常を映すだけでは終わらない。開発を目論む都会者がやって来たことをきっかけに、昔ながらの生活を営む村は徐々に混乱に陥ってしまうのだ。ラジオからは不安定な国内の政情が伝えられ、変化の波から逃れることができずに翻弄される人々の姿が描き出されていく。その様子はどこか、便利さや近代化を追求したことによって何か大切なものを忘れてしまった先進諸国に対するメッセージとも受け取ることができる。

日本では東日本大震災の影響から電力不足が懸念され、リアルタイムの電力使用率が発表されるなど、今夏はかつてないほど節電に対する関心が高まった。幸いにも大規模な障害には至らなかったが、冬に向けて電力需給への不安は未だ拭えないままとなっている。そんな今だからこそ、本作で“明り屋さん”が灯す電球の光に、深く考えさせられるはずだ。【トライワークス】

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