ダンカン・ジョーンズ監督「結末は『これしかない!』というアイデアを生かした」

インタビュー

ダンカン・ジョーンズ監督「結末は『これしかない!』というアイデアを生かした」

目覚めると別人の身体。8分という限られた時間を繰り返し、列車爆破テロ事件の犯人を捜し出す。そんな斬新な設定と、緻密に練られた展開で見る者を引き込むサスペンスアクション『ミッション:8ミニッツ』が10月28日(金)より公開を迎える。メガホンをとったのは、『月に囚われた男』(09)で英国アカデミー新人監督賞に輝いたダンカン・ジョーンズ監督だ。先日、来日した監督が、作品に込めた思いや主演のジェイク・ギレンホールとの撮影、そして父親デヴィッド・ボウイの存在について語ってくれた。

前作『月に囚われた男』以来、様々なオファーがあったそうだが、そのほとんどは“主人公がどこかの惑星に漂流している”とか“ロケットの中に閉じ込められて宇宙をさまよっている”といった孤独なSF作品ばかり。そのなかで唯一、『ミッション:8ミニッツ』の脚本だけが、「色々な人物が出てくるアクションだったので迷わずに飛びついた」と話す。「非常に特殊な設定の物語なので、どう演出すれば良いのか悩みましたが、それは逆に言うと監督業の醍醐味。無理難題を突きつけられた時に、どういうふうに解決するかは監督としての楽しみでもあります。現在、ほとんどの映画は、小説やコミックの映画化だったり、何かの続編。この映画のように全くのオリジナル脚本を映画化できることは奇跡に近いと思います。それだけ今回の脚本が素晴らしかったということです。あまり下手にいじりたくなかったんですが、ダークでシリアスな脚本だったので、私はジェイクと共同でユーモアを盛り込みました。そして、最もこだわったのは結末です。自分の頭の中に浮かんだ『これしかない!』というアイデアを生かしました」。

主演を務めたジェイク・ギレンホールは、『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』(05)などの甘いラブロマンスや、犯罪ミステリー『ゾディアック』(06)、アドベンチャー作品『プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂』(10)など、幅広いジャンルで存在感を発揮する演技派俳優だ。本作では、アクションに果敢に挑戦すると共に、限られた時間と孤独に苦悩しながらも、爆発犯と戦う男を熱演している。この作品をきっかけにジェイクファンがさらに増えるはず。監督にジェイクの魅力について聞いてみた。「彼はハンサムだからね(笑)。映画の中の彼が好きだったら、実際に会ったらもっと好きになるはずだよ。ジェイクは才能のある俳優であると同時に、とても頭が良いし、面白い。ハートもあるし、素晴らしい人。映画が進むにつれ、コルターは自分が巻き込まれていく状況への理解が深まっていき、行動がエスカレートしていく。その部分は一番話し合いました。今回、私とジェイクは年齢的にも近かったので、友達のような感覚で映画を作ることができた。彼にとって新鮮で楽しい経験になったと思います」。

ジョーンズ監督の父親は世界的なロックスターのデヴィッド・ボウイ。昔から何かと父親の名前を出され、本人は飽き飽きしていないのかと思いながら、父親の存在のことについて尋ねると、気さくな笑顔を浮かべて答えてくれた。「両親は私が幼い頃に離婚し、私は父親のもとで育ったので、父が紹介してくれた映画や音楽、アートにも影響を受けていると思います。子供の頃から言われてきたのは、『全身全霊で情熱を傾けられる何かを人生で探しなさい』という言葉。それは人生の道しるべになりました。現在、父はニューヨークに住んでいるんですが、劇場で普通にチケットを買ってこの映画を見たそうです。見終わった後、すぐに電話をくれて『とても気に入った』と言ってくれました」と、父子の仲の良い様子を伺わせた。

「映画通ほどダマされる」というキャッチコピーにもあるように、監督が最もこだわったエンディングは、誰もが衝撃や驚きを抱くはず。最後にメッセージをくれた。「この映画はSFあり、ミステリーあり、ロマンスあり、アクションあり、コメディーあり。全ての要素が詰まっていて、息をつく暇もないエキサイティングな展開は、いろんなお客さんに楽しんでもらえると思います」。93分と他の作品に比べてコンパクトな本作だが、作品全体に緊張感と謎が張り巡らされており、観客もコルターと一緒に犯人探しと謎解きを体験できる。是非ともこのスリリングな展開を劇場で堪能してもらいたい。【取材・文/鈴木菜保美】

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