ヘルツォーク、ヴェンダース、スコセッシが食傷気味の3D映画に世界の巨匠たちが新風を吹き込む!
まるで手を伸ばせば届きそうなほど、映画の登場人物や風景が生き生きとした存在感を放つ3D映画。世界的なブームの先駆けとなったタイトル『アバター』(09)などに代表されるSFやファミリー層をメインターゲットとしたエンタテインメント、驚きが恐怖に繋がるホラーといったジャンルでは、すっかり2D・3D両バージョンの同時公開が目新しいことではなくなった。だが、一般に浸透するにつれて「専用メガネが重い」「色が暗くなるから嫌」「料金が高い」というネガティブな声も観客の間から上がるように。そんな厳しい状況に早くも置かれた3D映画界を活気づけるかのように、世界の巨匠たちが監督したタイトルが続々公開される。
『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』(3月3日公開)はドイツ映画界を代表する鬼才、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の最新作。3Dの利用に懐疑的だったというヘルツォーク監督が、その自然の造形美や壁面に立体的に描かれた世界最古の壁画の数々は3Dでしか表現できないと確信したという南フランスのショーヴェ洞窟の内部を、3Dカメラでとらえたドキュメンタリーだ。賞レースでの注目度も俄然高く、アメリカで1月7日に発表された第46回全米映画批評家協会賞で最優秀ノンフィクション作品賞を受賞し、他にもニューヨーク、ロサンゼルスの映画批評家協会賞のドキュメンタリ映画賞を受賞しているのだ。
同じくドイツ出身のヴィム・ヴェンダース監督の『Pina 3D ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2月25日公開)は、2009年にこの世を去ったドイツの天才舞踏家&振付家、ピナ・バウシュが率いたヴッパタール舞踊団のダンスを3Dカメラで撮影したドキュメンタリーだ。アート系作品初の3D映画として注目を集め、第84回アカデミー賞のドキュメンタリー長編賞にもノミネーションされている。
また『タクシードライバー』(76)、『ディパーテッド』(07)などで知られるマーティン・スコセッシ監督の最新作『ヒューゴの不思議な発明』(3月1日公開)は、スコセッシ監督初の3D映画であると同時に、初のファミリー向けエンタテインメントとして、世界各国の映画ファンの驚きと期待を集めている作品だ。第69回ゴールデングローブ賞では監督賞を受賞し、第84回アカデミー賞でも作品賞のノミネーションされており、巨匠の新境地は好意的に受け入れられているようだ。
さらに『スターウォーズ エピソード1 ファントム・メナス 3D』(3月16日公開)、『タイタニック 3D(原題)』(4月6日公開)など、数々のメガヒット作の3Dバージョン公開も控え、日本映画でも『貞子3D』(5月12日公開)などが待機している。世界の巨匠たちが切り拓く新たな可能性が、再び3D映画に新風を呼び込むことになるのだろうか。【トライワークス】