まるで甲子園球児!? 『ヒミズ』染谷と二階堂の熱演を共演者が絶賛
ヴェネチア国際映画祭で最優秀新人俳優賞に当たるマルチェロ・マストロヤンニ賞をダブル受賞したことで話題の『ヒミズ』(2012年1月14日公開)。本作の完成披露試写会が都内で行われ、主演の染谷将太と二階堂ふみ、共演者の渡辺哲、でんでんが園子温監督と共に登場し、舞台挨拶を行った。
『恋の罪』(公開中)の鬼才・園子温監督が、“ある事件”によって運命を狂わされた15歳の男女の姿を描いた本作。原作は「行け!稲中卓球部」の漫画家・古谷実の問題作だ。これまで自ら脚本を手がけてきた園監督だが、「初めて原作ありきの作品を映画化する時は、素直にときめくものにしたかったので、自分で選んで持ってきました。原作では2001年の若者が描かれていますが、原作のスピリットに準ずるために、2011年の若者にした」と話し、東日本大震災の被災地でも撮影を行ったことについては、「3.11以降の環境を映画に取り入れたかった。どうせやるなら中途半端でななく、ちゃんとその現場に立ってやろうと思いました」と作品に込めた思いを語った。
主演を務めた染谷将太と二階堂ふみが、ヴェネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞したことで知られる本作。そのふたりの体を張った熱演は、共演の渡辺哲も「近くで見ていて可愛そうだった」と話すほど。撮影現場について染谷は「まるで戦場だった」と話す。「無我夢中で苦しかったかもしれないし、考えると痛いシーンもありましたが、その痛みは自分の心に響く痛みだった」と、若干19歳にして何とも奥深いコメントを発した。続く二階堂が「カメラが回ってないところは和気あいあいとしていたし、監督は優しいし、愛のある監督」と話すと、染谷も慌てて「僕もそう思うんですけど、そう言うと『優しくねえよ』って監督に怒られるから」と苦笑した。
ふたりをキャスティングした理由について園監督は、「ふたりとも自分の限界を作っていない。情熱とパワーがあって、日ごとに大きくなって、日ごとに自由を獲得していた」と話し、でんでんも「テイクを重ねる度に、目がだんだんと輝いていった。まるで甲子園で試合を経験する度に強くなっていく高校野球のチームのよう、という表現がぴったり」と絶賛した。そんな染谷や二階堂に「立派な大人になるためには?」というアドバイスを司会者から求められた渡辺は、「酒かな。後は言えないよ」と大人の笑顔を浮かべ、でんでんは「劇中、どっちが大人の芝居をしていたかわからないほど。これから世界に羽ばたいてもらいたい。そしておじさんを連れてってほしい」とコメントし、観客から笑顔がこぼれた。
また舞台挨拶後半には、染谷と二階堂へ向けたクリスマスプレゼントが登場。監督が箱を開けると、その中身はヴェネチア映画祭で受賞したトロフィー。意外にも、これまで染谷と二階堂の手に渡っていなかったというトロフィーが、初めて監督から手渡しされ、会場の観客からも「おめでとう!」と拍手が沸き起こった。染谷は「感無量です。これからも頑張ります」と、二階堂は「感謝でいっぱいです」と初々しい笑顔を見せた。
園監督が「日本人に見てもらおうと作った作品」と語る本作。先に海外の映画祭で高い評価を受けた本作が、日本人の心にどう響くのか。作品の公開を心待ちにしてほしい。【取材・文/鈴木菜保美】