ワイルドなニュースター『ジョン・カーター』のテイラー・キッチュを直撃「別世界に連れて行くよ!」
神秘の惑星バルスームを舞台に、地球の男が縦横無尽の活躍を見せるファンタジーアドベンチャー『ジョン・カーター』(4月13日公開)。本作でタイトルロールを演じ、本年度最もホットな俳優の一人であるテイラー・キッチュを直撃。「映画は現実から逃避させてくれるもの。まさにこの映画はその代表的なもの。みんなを別世界に連れて行くよ!」と、力強く自信作をアピールしてくれた。
大胆なイマジネーションとロマンに富んだエドガー・ライス・バローズの伝説的SF小説「火星のプリンセス」を原作に、『ファインディング・ニモ』(03)、『WALL・E ウォーリー』(08)のアンドリュー・スタントン監督が初めて実写映画に挑んだ本作。抜擢された感想を尋ねると、「アンドリューは10歳の頃に原作を読み、この作品と共に育ったと言っても過言じゃないんだ。そんな思いのこもった作品に出演できて、ジョンという男に息吹を吹き込めて、本当に光栄だよ」と感慨深けに語ってくれた。
大役へのプレッシャーに関しては、「自分で自分自身にかけるプレッシャーが一番重かったんだけどね」と笑うが、この一言は監督も全く同じだったそう。本作の映画化は30年以上も温め続けた監督の情熱そのものだ。テイラーは監督について、「戦場に一緒に戦いに行きたいと思える男」と敬意を表する。「映画の現場では信頼が全て。この作品では携った人たちみんながファミリーと感じられた。そんなことは稀だよ。彼らと共に全力投球できたし、今回の挑戦によって自分自身も成長できたと思う」と胸を張った。
ジョンの冒険譚はワクワクするシーンの連続だ。「ウーラやタルス・タルカスとの絆、巨大なホワイトエイプとの闘いなど、僕も興奮することばかりだったよ! なかでも僕が気に入っているのは、西部劇のように馬に乗るシーン。この作品では、ニューヨークでは紳士であり、バージニアでの西部劇のような体験、そしてバルスームでの冒険など、幸いなことにジョンとして色々な経験ができたんだ」。
役柄を心から楽しんだテイラーだが、最も魅力に感じたのは彼の内面だという。「彼は正しいと思ったら、それを行動に移せる男。家族を守るために南北戦争に行くという行動に出て、しかし結局、悲しいことに家族を失ってしまう。守りたいもの全てを失った後に、彼にバルスームで新たなチャンスが与えられるんだ。それはとんでもない、驚くような状況だったけどね(笑)。大人も子供も共感できて、親しみの持てるキャラクターだと思うよ」。
内面を表現するため、兵士について色々とリサーチしたというが、「兵士がどうして戦場に行ったかというのには、各々に理由があった。なかでも、南北戦争で戦った多くの兵士が、ジョンと同じように家族を守るために戦場に行ったということを知り、それが強く心に残ったんだ」と、役作りの中で得たものを明かしてくれた。
苦難を乗り越えて、正義のために戦うジョンは誰しもが胸を熱くするヒーロー像だが、テイラーにとってのヒーローとは? 「ここ最近の仕事の中で、たくさんの軍関係者と関わることができたんだ。そこで、彼らの自制心、規律、自己を犠牲にして任務に従事する姿を見て、すごく感動した。男性も女性も、その姿は尊敬に値する素晴らしいものだったよ」。
映画作りの中で、あらゆる刺激と自身の成長を実感している様子が伝わってくるが、今年は本作をはじめ、アクション大作『バトルシップ』(4月13日公開)やオリバー・ストーン監督の『Saveges』(全米7月6日公開)にも出演する。今の状況をどう感じているのだろうか。「ありがたいことだよね。すごいキャリアを持つ人たちとも共演して、一生の中でも素晴らしい経験をさせてもらっていると思う。そのなかで僕が一番大事にしていきたいのは、シンプルにやっていきたいということ。大作でも小さな作品でも関係ない。これからもシンプルに楽しんでいきたいと思うよ」。
気負わず、気取らず、ワイルドな雰囲気の中に優しさがにじみ出すテイラー。王女との恋や、体をはって彼女を守ろうとする姿にときめく女性も多いはずだ。怒涛の展開にラストまで釘付けの本作は、彼の魅力が存分に発揮されている。是非、ニュースターの誕生を劇場で確かめてもらいたい。【取材・文/成田おり枝】