小栗旬、自らを壊す構造改革「ようやく羞恥心のタガを外せるようになった」
『宇宙兄弟』(公開中)、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(9月7日公開)と、話題作が続く小栗旬。彼が声優として主演を務めたアニメ映画『グスコーブドリの伝記』が、7月7日(土)より公開される。宮沢賢治の同名童話を、『銀河鉄道の夜』(85)の杉井ギサブロー監督チームが映画化した本作。彼が声を当てた主人公のグスコー・ブドリは、天災が続く中、家族と離れ離れになりながらも、常に誠実に生きていく。小栗旬にインタビューし、本作への思いや、昨今の仕事に対する心境の変化について話を聞いた。
東日本大震災が起こり、度々異常気象に見舞われる今、本作が公開される意味は大きいのではないだろうか。「杉井さんが『銀河鉄道の夜』以来、何十年か経って作った本作と、小田和正さんが今から約30年以上前に作った主題歌『生まれ来る子供たちのために』、そして僕たちが今こうやって参加させてもらったことも含め、全部時間軸が違うところで動いていたものがうまく重なり合ったことはすごいと思いました。でも、僕たちは作り手側だからそういうことを考えるんだけど、実は受け取る側にとってはあまり関係ないんじゃないかと、最近思うんです」。
以前とは少し考え方を変えたという小栗。「今まではずっと胸を張って、テーマを伝えようとしてきたんですが、ちょっと一回、それを忘れてみようかなと。もしかすると、その方が普通に映画を見る人と近い目線でものを見られるんじゃないかと思って。だから、変に理由付けをしたくないなとも思うようになりました」。
声優の仕事の難しさについてはこう語った。「アフレコをする場合は私服でやるし、収録のギリギリの時間帯まで自分なんです。そこから切り替えて、いきなりテンションを上げることがすごく苦手で。でも、最近やっと羞恥心のタガを外せるようになってきました」。これまで果敢に色々な役どころにトライしてきた小栗から“羞恥心”という言葉が出てきたのは意外だった。
「実は僕、基本的に昔から恥ずかしがり屋で、失敗することがすごく嫌いな人なんです。だから、こういうことをしちゃいけない自分、みたいなものを作り、ある時期までがむしゃらにやってきました。それである程度、土台みたいなものができたら、それに甘んじていた気がするんです。でも、ここ数年の作品を見ると、平均点を取る芝居ばかりをしていて、『最近つまんねえな、この人』と思うようになってきて。もちろん、全て一生懸命やっているつもりですが、昔は0点の時もあれば、100点の時もあった気がするけど、最近はずっと60、70点を行き来している芝居だなと。それで『よし、もっと自分と向き合おう』と思うようになりました」。
そこから彼は、自分を壊そうとしたという。「すごく勇気のいることですが、自分がしたくないことをするしかないと思ったんです。僕は基本的に、初めてチャレンジすることをまずしたがらない人ですが、最近はとにかく言われたことは何でもやってみようと思って。プライベートでもそうです。今はもっと本当の自分の内面的なものを拡張していかないと、新しい成長はないなと。自分の構造改革をしていかなくてはいけないんです」。
今や日本の映画界を牽引する逸材となった小栗旬は、「自分の出演作を10回以上は見る」と言っていた。彼が常に前進し続けられるのは、自分自身を冷静に俯瞰で見て、既存のものを壊すことを怖がらずに突き進んでいくからだ。彼の勇気ある構造改革を今後も見守っていきたい。【取材・文/山崎伸子】