個性派俳優・村上淳、虚勢を張った20代、再び青春を迎えた30代。20年の役者道とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
個性派俳優・村上淳、虚勢を張った20代、再び青春を迎えた30代。20年の役者道とは?

インタビュー

個性派俳優・村上淳、虚勢を張った20代、再び青春を迎えた30代。20年の役者道とは?

熊切和嘉監督がチュートリアルの徳井義実を主演に迎えて、不良少年たちの“その後”を描く『莫逆家族 バクギャクファミーリア』(9月8日公開)。阿部サダヲ、大森南朋、玉山鉄二、新井浩文ら、日本映画界を代表する実力派俳優が参加する本作の中でも、抜群の存在感で鮮烈な印象を残すのが村上淳だ。「映画にしかないカタルシスがある。映画らしい作品ができた」と胸を張る彼に、40代を目前にした今の心境、映画人としての心意気を聞いた。

本作は、かつて喧嘩に明け暮れた不良少年たちが、社会にうまく適合できないまま30代を迎え、いかにその後の人生に落とし前をつけていくかを描いたバイオレンスドラマだ。俳優陣が、30代の痛みを見事に体現する。監督も含め、同世代メンバーとの共演の感想を聞くと、「今回ね、この面子がそろいましたから!刺激となる部分は多かったですよ。25歳の同世代が集まったというのとは、やっぱり違う。僕たちの多くは40代になろうとしていて、10年、20年とキャリアを積んできたから、作品のクオリティは出さなきゃいけないし、端からハードルは高くなる。みんな必死だったでしょ?その熱は半端なかった」と目を輝かせた。

村上が演じるのは、30代を迎えながらも過去にとらわれて、前に進めないでいる五十嵐役。「僕は原作があるものは、漫画であれ、小説であれ、読まないようにしているんです。脚本を頼りに役に入っていくんですけど、最初に読んだ時に、すごく五十嵐のことがわかったんです。バブルを引きずっている人もたくさん見てきたし、90年代、アイコンと言われた人たち、僕なんかまさしくそうだと思いますが、その中にはどうしても『あの頃のように』というような人もいる」。続けて、こう胸の内を明かしてくれた。「僕は今、39歳で、20年役者を続けていますが、周りには『そろそろ家庭を持つ』とか『田舎帰るわ』とか、色々な事情で現役を離れていった人もいる。五十嵐が一人で現役に残った時の、どこか宙ぶらりんな感覚もわかるんですよね」。

真っ黒な遺恨を持ち続け、徳井演じる鉄らに執拗な復讐を始める五十嵐。彼のギラギラとした狂気は見るものを圧倒するはずだ。「五十嵐という役は、現場で跳ねるんですよ。五十嵐が言うことを聞かなくなってくるんです。テスト中にも本番直前にも本番中にも、“何か”が生まれるくらい活き活きとした現場だった。ピンと張り詰めた緊張感があって、全てのパートが役者に集中力を注いで、支えてくれた。そういったもの全てが作品に映っていると思います」。

五十嵐役もそうだが、これまでにも多くの個性的な役柄を担ってきた。どのようにアプローチしていくのだろうか?「20代の頃は、役を憑依させようとしていた。現場と日常が制御できなくなったこともありますね。今は、イメージしたものを自分の体を使ってやってみせるという考え方。押さえ込んで、現場でそれをパン!と解き放つ。でも、今だって成長過程ですし、模索だらけです」と笑うが、20年の役者道の中では、メンタルにも変化があったと続ける。「20代の頃は、『テレビは出ない』と思っていたんですね。虚勢を張っていたんでしょうね。今は真逆で、テレビというモノにだって挑戦したい。もはや虚勢を張っているような自分はもういないんです」。

その変化はどこから来たのか?「もちろん、映画にこだわりたいという気持ちはずっと持っている。でもね、色々な人、場所と出会いたいなって思ったんです。映画狂いが集まって映画を作るだけでは、広がらないんじゃないかっていう気もしていて。徳井くんにしたって、今回の主演は彼でしかありえなかった。そうやって色々な人と出会って、色々な風を入れていくことで、映画界も風通しが良くなるんじゃないかって。『枠なんか取っ払っちゃえば良いじゃん!』って思うんです。その方が絶対、面白いものができるでしょ?だから今の自分は、“虚勢を張らなくなった×丸くなった+冷静さ=攻める行為”といった感じかな。一回りして、もう一度、青春が来ているみたいで、ワクワクしているんです」。

映画への愛情が彼を支えていることがひしひしと伝わってくる。「3、4年前から映画館で映画を急激に見ていて、映画学校の願書を取り寄せたこともあるんですよ(笑)。やっぱり映画が楽しくてしょうがない。映画って自由で良いじゃないですか。スクリーンでは、何が起きたって良いんですから」。熱っぽく、キラキラとした瞳で語る姿は、見ているこちらまでワクワクとさせる。多くの監督から信頼を得ているのも納得だ。まずは本作で彼の暴れっぷりを堪能してほしい!【取材・文/成田おり枝】

メイク:IZUTSU(impress+)
衣装協力:waste(twice)
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