『新しい靴を買わなくちゃ』で桐谷美玲と綾野剛が語る、女性の素直さとは?
岩井俊二プロデュース、人気脚本家の北川悦吏子が脚本・監督を務めたラブストーリー『新しい靴を買わなくちゃ』(10月6日公開)で共演した桐谷美玲と綾野剛。本作では、主演の中山美穂と向井理が織り成す3日間の恋と併行して、桐谷と綾野が扮する遠距離恋愛中のカップルの物語が展開される。愛し合う恋人たちを好演したふたりにインタビューし、撮影秘話から、劇中で描かれる遠距離恋愛まで、話を聞いた。
『ロングバケーション』(96)、『ビューティフルライフ』(00)などを手掛けてきた北川悦吏子は、“恋愛の神様”と言われる脚本家だ。桐谷は「もともと、『オレンジ・デイズ』(04)とか、北川さんの作品が大好きだったので、一緒にお仕事ができるってことがとても嬉しかったです。すごく好きなお話で、特に女性はキュンキュンするんじゃないかと思いました」と、脚本の感想を語ってくれた。
綾野は「ガイドブックみたいな台本」というのが第一印象だったという。「3日間のお話で、セリフが圧倒的に多いけど、ほとんどが日常会話なので、台詞以外の行間でどう存在するかが大事だと思いました。台本では5行しかないシーンでも、5、6分長回しするような現場だったので。台本を当てにしないってことではなく、ガイドブックのように見て、どこのレストランを選ぶか、どこの場所に自分が行くかってことをそれぞれで選ぶような感覚でした」
桐谷扮するスズメが、パリにいる恋人・カンゴに会いに行くという設定だ。スズメについて、桐谷は「私はあんなに行動力はないですし、あんなに可愛く甘えられないです」と言うと、綾野は「甘えてくれて良いのに」と微笑む。「やっぱり素直になる時が、女性が一番美しくなれる瞬間なのかなと。素直を我慢していくと、感性がどんどん劣化していく。“自己中心的”と“素直”とは全然違うし、好きなものにちゃんと素直になれる、愚直になれるってのは良いことです」と言う綾野。桐谷もうなずきながら、「あそこまでストレートに素直になれるのは、羨ましいです」と語る。
遠距離恋愛については未経験だというふたり。桐谷は「今だったら、メールとかできるから、それで寂しいっていう気持ちはわからないです。ただ、遠距離恋愛をできるような強さは欲しいですね」と話す。綾野は「カンゴって、悪気なく都合よくスズメありきの人なんですよ」と言う。「待っていてくれると思えるんだから。僕自身は、遠距離恋愛ってやってみないとわからないですが」。
彼らが扮した恋人たちのやりとりは、みずみずしい果実のように、生き生きとしている。桐谷は、綾野について「アドリブが多かったので、どうしようってなったけど、綾野さんが『何をしても受け止めるから、大丈夫だよ』って言ってくれて。すごく素敵な、頼りがいがある方でした」と、絶大な信頼感を口にすると、綾野は「そう言われると恥ずかしい」と照れながら、「映ってる映像のほとんどが即興ばかり。ちゃんとキャッチボールできたことが助かりました。自分一人じゃ何もできないので」。
インタビューの雰囲気からも、現場でふたりの息がぴったり合っていた様子が伺えた。スズメとカンゴのパートでは、愛し合うふたりだからこそ生まれる葛藤や戸惑いがヴィヴィッドに浮き立っている。ふたりが目線を絡ませながら交わす会話の一つ、一つが胸に染みるのだ。そのキャッチボールをじっくりと堪能したい。【取材・文/山崎伸子】