斎藤工、TIFF応援団の仕事は「オフのゾーンでやる。自分に嘘はつかない」

インタビュー

斎藤工、TIFF応援団の仕事は「オフのゾーンでやる。自分に嘘はつかない」

『逆転裁判』(12)や『愛と誠』(12)と快進撃を続ける斎藤工が、第25回東京国際映画祭の「TIFF応援団」を務めることになった。この応援団の目的は、若者の目線から見た映画や映画祭の魅力を発信すること。斎藤にインタビューし、TIFF(東京国際映画祭)の醍醐味について聞いた。

映画好きで、俳優業の他、WOWOWの映画情報番組「プライムショー」や「映画工房」 のパーソナリティとしても活躍する斎藤。でも、パーソナリティやTIFF応援団の仕事については「仕事と思ってはいない」と断言する。「僕はたぶん同世代の人間よりは、家にこもってたくさんDVDを見て思春期を過ごした人間です。それは自分のライフワークでもあるんですが、映画鑑賞自体は、プライベートなゾーンなんです。それをビジネス展開してしまうと、純粋な姿勢ではなくなっちゃうから、WOWOWや今回のお仕事は、仕事ではなくオフのゾーンだと思ってやっています。いかに自分に嘘をつかないかってところが勝負ですね」。

バックパッカーとして海外へ行き、現地で映画を見るのが趣味だった斎藤は、各地でいろんな刺激を受けてきたという。「国によって映画の見方が違っていて、たとえばヨーロッパでは歓声を上げながら見るんです。アジア圏もそうですね。チケットが単純に安いってこともありますが、ファーストフードを食べるみたいな感じで、映画が娯楽としてあるんです。でも、日本では映画やお芝居を見ることって、非日常なんですよね。格式が無駄に上がっているというか。僕はそれをどうにかしたいんです。映画や舞台って大衆のものだから、そこに立ち返るべきなんじゃないかなと」。

東京国際映画祭については、世相を反映した各国の作品群がラインナップされる点が好きだと話す。「映画って、ある意味、ニュースを見るような感じで、時代を知ることができるものだなって思います。特にTIFFで僕が秀逸だと思う特色は、タイやインドネシアなどアジア圏の映画にも着眼しているところです。アジアの今をはじめ、アフリカの今、ヨーロッパの今、言ってみれば世界の今を知ることができる場所かなって。テレビでは流せないものが、映画表現だと思っています」。

昨年、TIFFで東京サクラ グランプリと最優秀男優賞を獲得したフランス映画『最強のふたり』(公開中)が現在大ヒット中だが、斎藤はそのことを心から喜んだという。「あの一例が僕の中でもこれからの映画のあり方の良いモデルケースになりました。みんなが知っているスターが出ていない作品だけど、クチコミで大ヒットしたから」。

映画の素晴らしさについては、一段と熱っぽくなる斎藤。「映画って不思議なんです。一本の映画で人生が変わったり、それが職業案内の決め手になったり、背中を押してくれたりするものだと思うから。僕は映画って、出会いだと思っています。僕自身もたくさんの救いを感じたり、今の僕を形成している要素だと感じているし。映画は総合芸術で、一娯楽に収まりきらないものだと思います」。

また、斎藤は、映画とDVDとの違いについてこう話す。「映画って体感するものだと思っているんです。リュック・ベッソンが昔、『DVDは劇場で体験したことを思い出す、思い出のアルバムみたいなもの。映画は体感するものだ』と強く言っていたのですが、とても共感しました。作品の善し悪し問わず、経験値になるか、ならないかってところが違うなと。人と共有してる空間で映画を見ると、確実に記憶に刻まれるんです」。

いよいよ、今週末に幕を開け、10月20日(土)から28日(日)までの9日間に渡って開催される第25回東京国際映画祭。世界中から集まった最新の話題作や注目作が一挙に見られるまたとない機会だ。斎藤の言葉通り、是非映画祭へ足を運び、人生を豊かにしてくれるであろう素晴らしい映画を体感したいものだ。【取材・文/山崎伸子】

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