むごすぎる領土争い!誰も知らなかった朝鮮戦争の本当の悲劇
尖閣諸島や竹島など領土問題が大きな話題になっている今だが、朝鮮戦争の知られざる惨状を描いた韓国映画『高地戦』(10月27日公開)は、同民族間の争いという点が最大の悲劇だ。特に、これまで語られていなかった停戦協定成立から発効までの12時間に行われた激闘のドラマは、両国の無数の犠牲者の慟哭を映し出している。
戦争の悲劇を力強く活写したのは、『映画は映画だ』(09)、『義兄弟 SECRET REUNION』のチャン・フン監督。脚本を手掛けたのは、『JSA』(01)の原作者として知られるパク・サンヨンだ。チャン・フン監督は、本作と同じように南北朝鮮の軍事境界線上での悲劇を扱った『JSA』を見て、とても感銘を受けたと話す。「パク・サンヨンさんはどの脚本家よりも次回作が気になる方でした。そんな中、『高地戦』で偶然一緒に仕事をすることになり、とても興奮しました。パクさんとの作業は本当に楽しいものでした。全体的に作品に対するふたりの姿勢や方向性が似ていたため、具体的な話を進めるのがスムーズでした」。
100億ウォン規模の製作費をかけた本作。チャン・フン監督のプレッシャーは相当大きかったようだ。「一番悩んだ部分は、商業的なアプローチと作品的なアプローチの均衡を保つことでした。過去の戦争という素材を扱っている映画なので、あまり映画的に、商業的に攻めていくのが負担だったのです。逆に予算に対しての責任という部分では、戦争映画として期待される部分を、どう満足させるかということに悩まざるをえませんでした。結局、なるべく映画的な誇張をしすぎず、リアルな場面を作っていくという方向に舵を切り、全体の均衡を保つよう努力しました」。
そう、本作の懐が深い点は、寓話的な要素が入っているものの、過剰なメロドラマ路線に走らず、その分、それぞれのキャラクターを丁寧に描いているところだ。『トンマッコルへようこそ』(05)のシン・ハギュン、『白夜行 白い闇の中を歩く』(09)のコ・スをはじめ、両国の兵士たちに扮した個性派俳優陣が、適材適所で戦地での葛藤や苦悩、友情のドラマを体現していく。それを見ると、戦争というのは国対国という単純な構図で済まされるものではなく、国に翻弄された数万人以上の人々の人生が、無残に踏みにじられるものだと痛感する。特に停戦協定成立後に待ち受けていた惨劇には思わず絶句させられる。
『高地戦』は、韓国で2011年に公開され、大ヒットを記録。第48回大鐘賞映画祭での最優秀作品賞、撮影賞、照明賞、企画賞をはじめ、第32回青龍映画賞でも撮影賞、美術賞を受賞。そして、第84回アカデミー外国語映画賞において韓国代表作品としてエントリーされた。領土問題に揺れる今だからこそ、見ておきたい秀作である。【文/山崎伸子】