『フランケンウィニー』のプロデューサーが語るモノクロ映像の盲点と苦労話

インタビュー

『フランケンウィニー』のプロデューサーが語るモノクロ映像の盲点と苦労話

ティム・バートン監督が放つモノクロのストップモーション3Dアニメ『フランケンウィニー』(12月15日公開)で、プロデューサーを務めたアリソン・アバッテが初来日。ジャパンプレミアから様々なイベントまで、バートン監督と仲良く本作をアピールした美人プロデューサーにインタビュー。知られざる本作の製作秘話や、バートン監督の魅力について聞いた。

まずは、本作で一番苦労した点から聞いてみると、モノクロでパペットたちを撮ることだったと教えてくれた。「実は最初、カラーでパペットを作り、それをモノクロで撮影すれば済むだろうと思っていたら、とんだ間違いだったわ。全然、コントラストが綺麗に出なかったので、結局パペットを何十種類ものグレーのグラデーションを使ったものに全部一から作り直したの。でも、今度はそれを撮ってみると、女の子の顔が非常に不細工に見えてしまって。コントラストが激しすぎると、目の周りが黒ずんで見えたりするから、そこも難しかったわ」。

それでも、モノクロの映像にこだわった理由とは?「この映画のストーリーが持つ感情的なムードが一番上手く表現できると思ったから。ティムが子供の頃に大好きだった1930、40年代のホラー映画へのオマージュをこめたかったし、監督自身が当時体験した興奮を思い出したいという気持ちもわかったし。それに、モノクロ映像を見慣れてない子供の観客が、ちょっと斬新だなと思って、ホラー映画やモノクロの映画に目覚めてくれたら嬉しいわ」。

また、映画の舞台である架空の町“ニュー・オランダ”を作り上げる工程にも頭を抱えたそうだ。モデルとなったのは、バートン監督が育った1970年代のロサンゼルス郊外の町バーバンクだ。「当時の風景や建築様式をベースにしていて、しかも“オランダ村”と言っている。スタッフがアメリカ人といえども、それを理解させるのが難しかったわ。さらに、パペットのスタッフは全員イギリス人だったから、どれだけ口で説明してもわかってもらえなくて。現場はクレイジーだったわ(苦笑)」。

彼女は、バートン監督が製作した『ナイト・メア・ビフォア・クリスマス』(93)で、アーティスティックコーディネーターを務め、『ティム・バートンのコープスブライド』(05)や、『フランケンウィニー』をプロデュースし、バートン監督と深い信頼関係を築いてきた。プロデューサーとしての彼女の役割について尋ねると「全行程においてティム・バートンありきで、私は調整役よ。アイデア交換をするわけじゃないわ」ときっぱり言う。「全てが彼のアイデアから始まり、それを300人近いスタッフで形にしていくの。完成形は彼の頭の中にしかないわけで、私の役割はティムの意向を聞き出し、それをいかに簡潔に伝えるかってことよ。そして、300人が理想的な形で仕事ができるように仕向けていくの。たとえば、それぞれの専門家のところへ行って、ティムはこういうふうにやりたいと言っているけど、実際可能なんでしょうか?といったやりとりをするの」。

調整役は大変だが、それでもバートン監督との仕事は素晴らしいのだと語る。「私もそうだけど、一度ティムと組んだ人が、また次も一緒に働きたいと思うのは、彼がコラボレーターとして優れているからよ。全員の意見にちゃんと耳を傾け、それを取り入れるか、取り入れないかはともかく、一緒に彼と共同作業をしているという気にさせてくれるのよ。そういうところがすごいと思うわ」。

では、一緒に仕事をしていくうえで、困る点などはないのだろうか?「とってもスイートな人だから、文句のつけようがないんだけど、あまりにも完璧主義なところはプロデューサー泣かせね。スケジュールを予定通りに進めたいのに、粘りに粘られる時があって、そこは辛いところよ。でも悔しいことに、彼の言う意見は常に100%正しいの。映画をさらに良くするために言っているってことがわかっているので、無理を受け入れつつ、予定を調整していくのよ。まあ、それも楽しいからね」。

終始笑顔でパワフルに動いていたアリソン・アバッテ。ティム・バートン監督がチャーミングでファンタスティックな作品を生み出せるのは、このプロデューサーの力も大きいのだと実感した。初来日ということで、鎌倉で大仏が見たいと言っていたが、無事観光できたのだろうか?話を聞いて、ますます『フランケンウィニー』を応援したくなった。【取材・文/山崎伸子】

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