『理想の出産』ルイーズ・ブルゴワン「人生の中でこの幸せな経験をしてみたい」
ミステリー小説などで知られる人気作家エリエット・アベカシスの自伝小説を、『アデル ファラオと復活の秘薬』(11)のルイーズ・ブルゴワンを主演に迎えて映画化した『理想の出産』(12月22日公開)。ヒロインが妊娠し、出産を迎えるまでの不安や葛藤など、繊細な感情はもちろん、特殊メイクで変化していく体つきもリアルで、あまりにも赤裸々なために日本ではR18+指定となった本作。ヒロインのバルバラを演じたルイーズは未婚でもちろん出産経験もない。そんな彼女に撮影の苦労話などをを聞いた。
――原作小説「un heureux evenement」は読まれたのでしょうか?もし読んでいたらその感想を聞かせてください
「原作は読んでいたんですけれど、私が原作と映画を比べると、映画の方がもっと太陽が光輝いている楽天的なところがあると思うんですね。原作は女性が妊娠した時や、育児をした時の不平不満を書き綴っているようなところがあり、それに比べて映画はもっとロマンティックな部分が前面に出ていて、そこが気に入っています」
――あなたはまだ出産経験もないということで、撮影にはかなり苦労したと思います
「撮影はベルギーだったんですけれど、出演した赤ちゃんたちと慣れるために、3ヶ月間ぐらいフランスの自宅に帰れなかったんです。皆さん、気が付かないと思いますが、赤ちゃん1人を演じるのに10人ぐらいの赤ちゃんが出ているんですね。その10人の赤ちゃんと、赤ちゃんのお母さん、お父さんと一緒に過ごすために、ずっとフランスを離れているのが寂しかったですね」
――実際に何度も病院に行って出産シーンを見学したということですが、ご覧になって率直にどう思われましたか?
「出産シーンに立ち会う中で、女性のほとんどが自然分娩で出産がしたいと言っていましたね。しかし、その自然分娩が、私が想像した以上に苦痛で大変そうだったので、私自身は無痛分娩にしようと思いました」
――陣痛時の呼吸法を続けすぎて過呼吸で気絶したと聞いたのですが、そこまで役柄にのめり込んでいたということですよね。バルバラを演じて、どういったことを一番に感じたのでしょう?
「今回は現実に直面しなくてはいけない大変な撮影でした。当然、赤ちゃんは私たちの前で演技をしてくれませんし、撮影の準備期間として、出産クラスに通ったり、本当の出産シーンに立ち会ったり、いつわりのお腹や胸などをつけて歩き回ったり、準備にもかなり時間をかけたので、バルバラとの違いが自分の中で意識できないような一体感というのがありました。私の女性としての人生にとって、この作品に参加したということは大きな変化をもたらしてくれて、たくさんのことを学ぶことができました。そして今回の撮影にはすごく感動しています」
――『アデル』(10)の時とはかなり役柄が違いますが、女優としてどんなところにやり甲斐を感じているでしょうか?
「バルバラを演じることで、私はすごく責任感を感じていましたね。これまでにフランス映画の中で、これほどリアルに出産、育児を描いた作品はありませんでした。ですから、バルバラという役を通して、妊婦であるということや、育児に悩むという女性の大儀を自分で擁護しなくてはならない。どういう罠に落ちてはいけないのかということを、このバルバラという役を通して観客に伝えなければならないという責任感をすごく感じていました」
――あなたにとって理想の出産とはどういったものでしょうか?出産は原題のとおり、幸せな出来事だと思いますか?
「私自身が出産や育児を経験したことがないので、それが本当に幸せなことか言えないのですが、きっと幸せなことだと思うので、人生の中で一度はこの幸せな経験をしてみたいとは思いますね」
――最後に日本のファンにメッセージを是非お願いします!
「この映画は、親になろうという人たちにとっては少し予防になるというか。前知識を持てる素晴らしい作品ですし、出産や育児に罪悪感を持たないすむであろう、とても良い映画なので、是非お勧めします!」
本作は実にリアルだ。だからこそ妊婦にとってより深く共感できる作品になっている。ルイーズが勧めるように、是非とも妊娠している方や、出産に不安を持つ方にこそ、そしてそれを支える男性にこそ見ていただきたい一本だ。【Movie Walker】