第85回アカデミー主演女優賞は努力家ジェシカ・チャステインと天才肌ジェニファー・ローレンスの一騎打ち
第70回ゴールデングローブ賞で、ドラマ部門主演女優賞を『ゼロ・ダーク・サーティ』(2月15日公開)のジェシカ・チャステインが、コメディー・ミュージカル部門主演女優賞を『世界にひとつのプレイブック』(2月22日公開)のジェニファー・ローレンスが、戦前の下馬評どおりに獲得、ふたりとも初受賞となった。難役を見事に演じ切ったふたりは、第85回アカデミー主演女優賞でも一騎打ちムードの感が既に漂っている。
ジェシカ・チャステインは、第64回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得したテレンス・マリック監督『ツリー・オブ・ライフ』(11)でブラッド・ピットの妻を演じ、一躍注目を集めた。さらに『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(12)で第84回アカデミー助演女優賞にノミネートされ、高い評価を受けている。その後、出演殺到で身動きがとれなかったなか、無理にスケジュール調整をしてまで出演を決めたのが、『ゼロ・ダーク・サーティ』だった。『ハート・ロッカー』(10)のキャスリン・ビグロー監督が、オサマ・ビンラディンの殺害に至るまでの真相に迫るサスペンスだ。ビンラディンを追い詰めた一人の女性CIA分析官マヤを演じるジェシカは、「マヤのような女性は、自分の感情を表には決して出しません。彼女の気持ちが変化していく様や自分を見失う姿を、慎重にゆっくりと演じなければなりませんでした」と語っており、撮影前に精密な演技プランを立てて準備し、一人の女性が全くの新人としてチームに加わった時から、対テロ作戦という霧に覆われた世界の中で舵を取っていくまでに変貌していく姿を見事に演じ切っている。
そんな努力家のジェシカに対して、ジェニファー・ローレンスはいわば天才肌に近いだろう。『ウィンターズ・ボーン』(11)で第83回アカデミー主演女優賞にノミネートされ、大人気アクションファンタジー『ハンガー・ゲーム』(12)でも主役のヒロイン役を務め、まさに今、全米で最も興行収入を稼ぐ女優とまで言われている。デヴィッド・O・ラッセル監督の大ファンという彼女は、『世界にひとつのプレイブック』で最愛の人を亡くし、心に傷を負った一人の女性を演じている。愛らしい姿からは想像もつかない過激な発言に突飛な行動を繰り出すが、なぜか愛さずにはいられないという難易度の高い役に対して、「毎日が挑戦」と語りつつ、「私は寝る前にセリフを読むことはしないの。プロの女優だからね」と笑顔で応えてみせる。監督も「彼女は自然児で、別格だ。圧倒された」とスカイプを通して行われたオーディション当時を振り返っている。
主演女優賞のオスカー像は誰が手にするのだろうか。第85回アカデミー賞授賞式は現地時間2月24日(日)にドルビー・シアターで開催される。結果が実に楽しみだ。【Movie Walker】