『ザ・マスター』アカデミー賞主要3部門ノミネートでも疑問の声が!
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(08)のポール・トーマス・アンダーソン監督が、新興宗教の教祖と、人生を見失い、宗教にはまっていく人々の姿を描いた人間ドラマ『ザ・マスター』(3月22日公開)。本作の出演俳優全員が第85回アカデミー主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞の主要3部門にノミネートされたが、その一方で作品賞と監督賞ノミネートから落選したことから、アメリカではノミネートについて論争が起こっているようだ。
サイエントロジーの創始者をモデルにしていると物議を醸した本作。第70回ゴールデングローブ賞では主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞の3部門にノミネート、第66回英国アカデミーで主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞の4部門にノミネートされ、第69回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞、主演男優賞のW受賞、国際批評家連盟賞の4冠を達成している。
第85回アカデミー作品賞へのノミネートが確実視されていたにも関わらず、ノミネートを逃した原因として考えられているのが、トム・クルーズが熱烈に信仰しているという新興宗教サイエントロジーをモチーフにしたことや、アカデミー賞不参加を表明した、映画界きっての異端児で有名なホアキン・フェニックスが本作に主演したいることなどが挙げられている。
これを受け、批評家やメディアからは、ローリング・ストーン誌の辛口批評家ピーター・トラヴァースが「オスカーは馬鹿で最低なノミネーションをした。作品賞に『ザ・マスター』と『ダークナイト ライジング』(12)がないなんて、恥を知れ」と声をあげた他、「ポールは前作でアカデミー作品賞、監督賞、脚色賞にノミネートされているし、『ザ・マスター』はヴェネチア銀獅子賞、LA映画批評家協会賞の監督賞を受賞、NY映画批評家協会とボストン映画批評家協会はポールを監督賞第2位にランクしている。サンディエゴ映画批評家協会では脚本賞を受賞。共同通信、ローリング・ストーン、NYタイムズ、ウオールストリートと米主要映画批評家が今年の最高作品として挙げているのに、なぜだ?」(オスカー・トーク)、「確かに俳優3部門でノミネートされたけど、なんでポールが監督賞と脚本賞に入らない?」(デッドライン.com)、「作品を取り巻く環境が悪かったのか?アカデミーの悪口を言ったホアキンのせいなのか、それとも『サイエントロジー映画』という間違ったレッテルを貼られたことか?作品賞にノミネートされようがされまいが、この映画は否応無しに強烈なインパクトを持つ」(エグザミナー.com)など、数多くの疑問の声が挙がっている。これは、これまでの前哨戦で作品賞や監督賞をほぼ総なめ状態している『アルゴ』(12)のベン・アフレック監督が、第85回アカデミー監督賞ノミネートから落選したことと全く同様のケースだ。
今回、主演男優賞にノミネートされたものの、一切のキャンペーン活動を拒否する構えを見せているホアキン・フェニックス。第85回アカデミー授賞式に、彼は姿を現すのだろうか。注目の授賞式は現地2月24日(日)に行われる。【Movie Walker】