山寺宏一、ディズニーの悪役キャラにまさかの苦戦!?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
山寺宏一、ディズニーの悪役キャラにまさかの苦戦!?

インタビュー

山寺宏一、ディズニーの悪役キャラにまさかの苦戦!?

“七色の声を持つ男”という異名を持つ山寺宏一が、ディズニーの最新アニメ『シュガー・ラッシュ』(3月23日公開)で、主人公ラルフ役を好演。ガタイの良い悪役は新鮮だったという山寺が、この役にどう挑んだのか?インタビューして、アフレコの収録秘話から、仕事のスタンスまで、色々と話を聞いた。

舞台がゲームセンターの営業終了後の裏側だという設定も興味深い。そこで悪役のラルフと少女ヴァネロペが出会い、お菓子の世界でアドベンチャーを繰り広げる。山寺が演じるのは、通常はゲームの悪役だが、根は優しくて良い奴という主人公のラルフだ。

山寺はこれまでディズニー映画で、ドナルダック、『アラジン』のジーニー、『リロ・アンド・スティッチ』のスティッチなど、変わり種を演じてきたが、ラルフのような役柄は初めて演じたという。「ディズニー映画では、発声自体がやっかいなものが多くて。ラルフみたいにガキ大将が大きくなったようなキャラクターを、主役としていただいたことはあまりなかったです。だから最初は、パイロット版でも作るのかと思いました(笑)。オリジナルの声はジョン・C・ライリーさんで、僕は吹替でもやったことがないので、大丈夫かな?と思いましたが、本当にやり甲斐のある役で嬉しかったです」。

ラルフ役については「難しかったです」と語る。「ゲームの悪役を演じるのではなく、悪役を演じる人を演じるってことだから。普段は乱暴者のキャラクターを演じているから、そういう部分も出さなきゃいけない。しかも、本当はとても優しく、ちょっとマヌケなところもある。いろんな面をまとめて出すのに苦労しました。さらに今回、ヴァネロペという少女と出会って、彼自身が変わるという、ラルフの成長物語でもある。僕が素直に出した声は、そんなにラルフにぴったりの声じゃないのなら、役作りもしなきゃいけない。でも、ナチュラルでいたい。そういう意味で、かなり複雑でした」。

現場では、ラルフの声について厳しい駄目出しも喰らったそうだ。「『それは違う。そういうふうには聞こえない』と言われて。自分ではこんなに近付けているし、ちゃんとやっているつもりなのに伝わらないの?と、思ったりもしました。でも、後から冷静に考えてみると、そういうことか!とわかったりもするんです。そういうやりとりが楽しいし、僕はそういうことを生き甲斐にして生きているみたいなものですから」。

コンプレックスの塊で、やることなすことが裏目に出るラルフだが、山寺は共感するところも多かったそうだ。「僕もなかなか良い役が来なかった時は、本当の俺ってもっと面白いのに、チャンスがないとグチグチ言ってばかりいました。でも、その後、『おはスタ』をやらせてもらったり、ドラマの仕事を三谷(幸喜)さんがオファーしてくださったりして。その時から、チャンスはいただいたんだから、できるできないは自分次第だと、思うようになったんです。たとえば、ドラマの仕事が続かなかったのは、僕に力がなかったからだと、今ではちゃんと思えるようになったし、誰かのせいにしなくなりました。志をぐっと高く持っているわけじゃないけど、今はただ、どんどん良い作品に出会いたいと思っています」。

後半でラルフが、ヴァネロペのためにある行動に出るところに胸が熱くなる。「ラルフは、たとえ自分を犠牲にしてでも、一番大事なヴァネロペに嫌われても、彼女のために何かをしようとする。それって自己犠牲の精神ですよね。ヒーローって、みんなにちやほやされ、良い格好をしたり、『いつもありがとう』と言われる人だけじゃない。実はヒーローは、もっと身近なところにいるんじゃないかと。本作は、ヒーローになりたいラルフの話ですが、本当のヒーローって何か?という話でもあるんです」。

アニメーション界のアカデミー賞ことアニー賞では作品賞をはじめ、監督賞、脚本賞、声優賞、音楽賞の最多5部門を制した本作だから、クオリティーはお墨付き。何よりも映画を見終わった後、愛と勇気に目覚めた悪役のラルフが、最高にクールに見えること請け合いだ。【取材・文/山崎伸子】

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