ウッチャンの込めたメッセージに「解散が本当の終わりではない」とファンモン・ファンキー加藤も共感!
ウッチャンナンチャンの内村光良が監督を務めた映画『ボクたちの交換日記』(公開中)。お笑い芸人コンビの“解散”という転機と絆を描いた本作の主題歌には、奇しくも今年6月の東京ドーム公演をもって解散を迎える、FUNKY MONKEY BABYS(FMB)の書き下ろし楽曲「サヨナラじゃない」が使用されている。そこで今回、内村監督とFMBのリーダー・ファンキー加藤に特別インタビューを敢行! それぞれが抱き追いかけてきた“夢”の経緯とその思いは、いったいどのようなものなのだろうか?
当初はお笑い芸人でなく、映画監督を志望していたことで知られる内村監督。専門学校時代にウッチャンナンチャンを結成し、お笑い芸人としてブレイクすることに成功したが、『ピーナッツ』(06)で監督デビューを果たすまで、心の隅では映画を撮りたいという思いを抱き続けていたという。「お笑い芸人としていつかは冠番組をもちたいっていうド正面の夢はありましたけど、昔から映画を撮りたいって常に心の中で思ってました。中学からの夢だったので。だから、バラエティ番組の中で10分だけミニドラマ撮らせてもらってりして、映画を撮りたいって気持ちを解消させてましたね」。
一方、ファンキー加藤が音楽で食べていこうと決めたのは、あるきっかけがあったという。「中学からバンドはやっていましたが、本気でやろうと思ったのは23歳くらいで、ちょっと遅いんです。社会に出ていくのが怖くて、音楽とか夢を盾に生きていたんですが、その頃に弟が結婚して家を建てたんですよ。それで、ヤバいなと思って。本気で男として独り立ちしたいと思って、ファンモンを結成したのが2004年。2年やってダメだったら諦めようって思ってました。デビューが2006年だったので、正直ギリギリでしたね(笑)。もし、2年過ぎていたら別の道を歩んでいたかもしれません」。
努力と幸運が実って夢を掴むことに成功した2人だが、もちろん当初から順風満帆だったわけではない。劇中でも描かれた“営業”には、互いに苦い記憶があるようだ。当時のヒップホップグループとしては珍しく全国でCDを手売りしていた加藤が、「営業で各地のショッピングモールを巡って歌いました。2006年にデビューしてから、紅白出場後の2010年くらいまでやりましたね。今は同様に全国を回っているグループもありますけど、先駆けはうちらだと思います(笑)。音楽に興味がないお客さんばかりなので、最初はめちゃくちゃ戸惑って、難しかったです」と苦労話を明かすと、内村監督も「映画で描いたような子供が走り回るデパートの屋上とかにもよく行きましたが、ステージはとにかく嫌で、いつもブルーな気持ちになってました。だって誰も聞いてないんだもん(笑)」と共感を寄せた。特に「終わったあとの片付けが悲しい(笑)」という点で、お笑い芸人とミュージシャンの垣根をこえて意気投合していた。
コンビの“絆”が描かれていることもあり、話はそれぞれのメンバーについても及んだ。内村監督が「コンビとしては開店休業みたいな感じですけど(笑)、特番で一緒になるとラクですね。全部仕切らなくて済むから。長年やっていることもあって、お互いに通じている部分があるのかな」と話すと、加藤も、「トリオは3人なので、コンビよりもさらにラクだと思います。意見が割れたら多数決とか。喜びは分かち合えるし、辛いときは力を合わせられるし、FMBはこの3人でなければここまで来れなかっただろうなと思います。ただ、ライブを見れば分かると思うんですが、喋りの負担は全部僕に来るんですよ。あとの2人は本当に適当で、DJケミカルなんて、ライブ開始15分前まで寝ていますから(笑)。そういうバランスで成り立っています」と、それぞれのグループ事情について嬉しそうに語り、“相方”への信頼感を覗かせた。
劇中では、“前向きに夢を諦める”という、ビターなテーマが中心に描かれている。本作に込めた思いについて、内村監督は「どんな夢であれ、夢を持つことは素晴らしい。それに向かって生きることは、人間の一番綺麗な姿なんじゃないかな。諦めて他の夢を追いかけるのもいいし、自分の判断が間違いではないという信念を持って、みんなに生きていてもらえればと思います」と熱く語った。それに「夢が変わるということに、ネガティブさはないと思いますね。夢は変わっていくものなんですよ」と加藤がうなずくと、「僕も、映画を志して上京したはずなのに、その2年後にはお笑い芸人になっていて、あれ?って感じでしたから(笑)」と内村監督がオチをつけ、爆笑する場面も。
作品も主題歌も、新しいスタートを予感させる内容になっているだけに、FMBの今後に注目が集まるところだ。内村監督は「加藤君たちが今後どうするかは、非常に興味がありますね。お笑いの世界はミュージシャンと違って、自然に1人1人で活動するようになって、うやむやになって、あまり“解散”って銘打たないじゃないですか。だから余計に(笑)。本人たちは終わった後に何を思うかまだわからないんだろうけど、楽しみです」と、彼らのこれからの活動に期待を寄せる。解散を前向きに捉えているという加藤は、「映画の房総スイマーズもそうですけど、解散してからのストーリーが長く描かれていましたし、これが本当の終わりではないですよね。とりあえず、東京ドームまでファンモンらしく突っ走っていくことがファンのみんなへの恩返しになると思うので。期待して欲しいですね」と語った。
最後に、内村監督の今後について尋ねると、「こうして2本目が撮れたけど、人間には欲があって、やっぱりまた撮りたいって思うんですよ。まだまだ映画を撮りたい。そんな思いが、次に繋がっていくんじゃないかな」と答え、次回作への意欲を見せてくれた。形を変えながらも、夢はまだまだ終わらないことを、それぞれの形で体現させた内村監督とFMB。互いの今後を楽しみにしつつ、まずは映画『ボクたちの交換日記』で結実した、ひとつの“夢”の完成形を、劇場でぜひ目撃してほしい。【トライワークス】