第66回カンヌ国際映画祭前半を振り返る

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第66回カンヌ国際映画祭前半を振り返る

ちょうど折り返し地点にきた第66回カンヌ国際映画祭。前半の話題作を紹介しておこう。

下馬評も得点の高いところで評価が割れているのは、2013年の作品が粒ぞろいの証拠だ。常連コーエン兄弟の音楽映画『Inside Llewyn Davis』(1961年のニューヨーク、グリニッジヴィレッジでフォークソングムーブメントを牽引した若きシンガー、ルーウェンの物語)は妥当なところとして、初カンヌのアスガル・ファルハーディー監督『Le Passe』(第84回アカデミー外国映画賞を獲った『別離』の監督で、今回は『アーティスト』のベレニス・ベジョを迎え、イラン人の元夫と正式に離婚するため彼をフランスに呼ぶが、彼と子供たちと今の恋人の間で揺れ動く女性の物語を描いている)と、三回目のコンペの賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督『A Touch of Sin』(4組の男女が経済発展の裏で貧困や人間関係に追い詰められていく様を描く)が評価が高い。この3本に迫るのが、是枝監督の『そして父になる』(10月5日公開、6年育ててきた息子が他人の子供だったとわかり悩む2組の家族を描く)だ。20本のコンペ作のうち、9本の下馬評がそろったところの評価である。

フランスのメディアは 、『Le Passe』(監督はイラン人だが、製作はフランスとイタリア)お気に入りのようだ。アメリカのメディアはコーエン兄弟と自国製作物に絶賛の作品は分かれているのだが、是枝作品と賈樟柯(ジャ・ジャンクー)作品は平均して好まれているところが頼もしい。両社とも、3度目のコンペでカンヌの注目を受けているのだが、監督としての受賞は未だなっていないので今回こそは、という感じがする。

実はジャ・ジャンクー作品は隠れ日本作。製作にオフィス北野とビターズエンドが関わっているのだ。そのせいか、今までのジャ・ジャンクー作品の静謐さとは違い、まるで北野武映画かというバイオレンスが加えられている。ある視点部門のオープニングを飾ったソフィア・コッポラ監督の『The Bling Ring』(セレブの家から盗みを繰り返していた10代の少年少女の実話を映画化)も、日本の東北新社が製作に加わっており、2013年の注目作は何かと日本に縁があるようだ。【シネマアナリスト/まつかわゆま】

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