永作博美、幸せのキーワードは「決断と覚悟」
絶妙なかわいらしさを保ちながらも凛と輝き、30代、40代の女性から圧倒的な支持を得る女優・永作博美。11月9日より公開される『四十九日のレシピ』では、不妊・義理の母の介護・夫の浮気に悩むアラフォー女性役にトライ。永作を直撃し、“女性の幸せ”について考えを聞いた。
物語は、母・乙美の突然の死から幕を開ける。主人公・百合子は、嫁ぎ先で、決して幸せとはいえない毎日を過ごしていた。永作は「固い鎧を着たイメージ」と百合子役を分析する。「百合子は生真面目で、“いい子”として育ってきた人だと思うんです。そして、嫁いだ場所での、百合子の付き合いがまったく見えてこない。それくらい、家の中にがんじがらめなんですね。逃げ場がない状態から、物語はスタートします」。
「百合子は、常に受身の人だった」と話す。そんな百合子が、母の遺してくれた思いや、生前を知っている人との出会い、そして父との関係をもとに、少しずつ新たな一歩を踏み出していく。父親役を石橋蓮司が、母親の生前を知る若者役を、二階堂ふみと岡田将生が演じている。「百合子が徐々に変わっていく姿を演じるのは、難しいなと思ったんです。でも現場に入ったら、お父さんである蓮司さんが、しっかりとそこに立っていてくださって。正面からぶつかっていけた。そしてまた、二階堂さんと岡田さんが素敵で!2人の天使レベルが、ものすごく高いです(笑)。現場の空気を感じて、人との関わりから、自然と百合子の頑なさがほどけていきました」。
百合子にとって、乙美は、実の母が亡くなった後に現れた継母である。母との距離が縮められなかったことが、百合子にとって心残りだった。永作は、「百合子にとっての空白は、やっぱり母のこと。母のことを、イモちゃん(二階堂ふみ)とハル(岡田将生)に教えてもらって、その隙間が少し埋まっていく。でも、母の一生を考えた時に、まだ空白の部分が見えてきてしまうんです。百合子は頑張って、その空白を自分の力で埋めようとします」と、百合子の心が解けていく過程を分析。
「百合子はそれまで、自分で決断をしてこなかった女性」と永作。「彼女は、やっと自分で決断をして、結果を得たということで、自信がついたんだと思う。静かな、誰も気付かないかもしれない小さな一歩だけれど、彼女なりの一歩が見えれば良いなと思いました」と、百合子の人生に心を寄せた。
私生活では、2児の母である永作。第1子は、39歳の時に出産した。“女性の幸せ”について、どのような考えを持っているだろう。「個人的には、男女の違いというのはあまり考えていなくて。自分の道を頑張って歩いていければ良いと思うんです。でも、やはり女性に生まれたからには、子供がほしいと思うのは自然の気持ちですよね。ただ、たくさんの時間や気力、労力が奪われるのも事実。子供を産むことばかりに囚われ過ぎてしまうと、他の可能性が見えなくなってしまうので、そういう時は一度、違う風を入れてみるのも良いかもしれませんね。どんな選択もある時代で、違う幸せだっていっぱいある時代だから」。
じっくりと、胸の内を明かしてくれた彼女。「生きているなかでは、みんな同じように色々なことがあって、それはそれは、しんどいこともたくさんあるもの。うまくいかないことだらけかもしれない」とうなずく。「でも、そこから抜け出すためには、決断して、覚悟するしかなくて。それが白だろうが、黒だろうが、青や赤だろうが、決断しない限りは、前に進まないんですよね。この先に何が待っているかわからないけれど、百合子が彼女なりの決断をしたことは、リアリティがあると思いました」。
人生の終わりのための活動、“終活”について聞いてみると、「『ああ、楽しかった!』と言って死ねたら良いですね」とニッコリ。「今は現実的に最期について考えられないけれど、だからこそ、毎日を精一杯、楽しく生きたい。そういう意味では、その日暮らしかな(笑)。もちろん、目的を果たすために苦労することも必要。苦労しながら、結果を出していくことがまた、楽しかったりするので。そうやって日々を生きていければ、充実の死に際になると思います」。
自分の力で決断をして、前に進むこと。しっかりと地に足をつけ、日々を楽しもうとする彼女の姿から、輝く笑顔の秘密が見えてきた。【取材・文/成田おり枝】