中島知子は「相手が自分に合わせてほしいタイプ」
久しぶりにスクリーンに戻ってきた中島知子。演じたのは、人気ドキュメンタリー番組「痛快!ビッグダディ」の美奈子の同名自叙伝をベースにした『ハダカの美奈子』(11月9日公開)のヒロイン美奈子役だ。『三年身籠る』(06)以来、7年ぶりに主演を務めた中島にインタビューした。
父親からのDV、10代での妊娠や出産、離婚、ビッグダディとの出会い、別れと、まさに一難去ってまた一難という波瀾万丈な半生を送ってきた美奈子。本作では、美奈子と6人の子どもたちの10年後を想定した物語を軸に、ヒューマンな親子のエピソードが綴られていく。
元々、ドキュメンタリーをずっと見ていたという中島。「こんなにドラマティックなことがあるのかな?と思っていたけど、これだけ子どもがいたらやっぱり毎日何らかのエピソードや事件はあるんですね。ミナ(美奈子)ちゃんのブログを見ていてもそう思いました」。
劇中では、中島扮する美奈子が、刺青入りの背中を見せるシーンが印象的だ。「あのタトゥーは、1時間くらいで書いてもらいました。あっという間でしたね。あれは、ベンジンで落ちるんですが、あの刺青を入れただけですごいテンションが上がりました。なんか『入ります!』と、賽を振りたくなりました(笑)。ミナちゃんのあの芸風は、この背中から来ているのかなと」。
中島は、美奈子と自分は、価値観が異なる部分も大きいと言う。「ミナちゃんは格好良いですよ。いろんなことがあっても、彼女は自分で選んで生きているので。ただ、彼女は男次第で変わる人生なので、そこは自分とは違うかもしれないです。私はどちらかというと、付き合う人に自分に合わせてほしいタイプなので。『ビッグダディ』を見ながら、『はぁ!?』といつも不思議に思っていたんです。こんなおっさんに合わせる人生って何なの?と。でも、それはミナちゃん独特の感性で、自分が好きになった人に対しては、ずっとついていく感じです。それは自分の中にはないですね」。
中島は、さらに自身の恋愛観についてこう続ける。「私は相手が自分に合わせてほしいと常に思っているんです。だから、合わせてくれない場合、ずっと話し合ったりします。もちろん合わせる部分もありますが、やっぱり私は仕事が好きなので。ミナちゃんは、すっと好きな人の下に入る人で、ダディの仕事も手伝ってやっていたでしょ。だからダディとの別れ際はすごく悲しくて。『一体、ダディは何しとるんや!』と、視聴者も思っていたんじゃないかな。ミナちゃんは、それでもダディが好きだから、別れたくなかった。そういう切ない女の気持ちがすごく出ていたと思います」。
脚本を手掛け、監督したのは『女の子ものがたり』(09)、『上京ものがたり』(12)で女の子たちの心のゆれを丁寧に活写してきた森岡利行だ。本作で、中島は「今回は、監督がやりたいことに全部従ってやろうと決めてやりました」とキッパリ。「バラエティーの仕事での私はツッコミなので、映画撮影でもいろいろと『このシーンはこうじゃないですか?』と、意見を言ってしまいがちですが、今回は監督から『是非、ついてきてほしい。自分が作った世界に入ってほしい』と言われたので、監督に委ねました。もちろんミナちゃんの世界の話だけど、改めて、映画は監督のものだということを自覚しました。現場では、周りの子どもたちに囲まれ、雰囲気がどんどんできていくのを感じ、身の引き締まる思いで楽しくやらせていただきました」。
いろんなものを乗り越えてきたからこその強さと優しさを備えた10年後の美奈子。中島知子は、肩肘張らずに、自然体で美奈子役を好演した。バラエティー番組でのキレのあるトークを展開する中島も素敵だが、スクリーンで独自の輝きを放つ女優・中島知子の今後もずっと追っていきたい。【取材・文/山崎伸子】