レオ、やばすぎるシーン満載の主演映画に「俳優のイメージなんて気にしなかった」
レオナルド・ディカプリオが、第71回ゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞し、本年度アカデミー賞主要5部門にノミネートされたことでも話題の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(公開中)。本作のプロモーションで来日したレオにインタビュー。主演と製作を兼ねたレオが、7年間を費やしたという本作への思いや、5度目のタッグとなったマーティン・スコセッシ監督との撮影秘話について語ってくれた。
レオが演じたのは、20代で証券会社を設立し、預金ゼロから億万長者となった、実在の株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォート役。彼の栄光から破滅に至るまでの破天荒な仕事ぶりや私生活が描かれる。レオは『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02)、『アビエイター』(04)、『ディパーテッド』(06)、『シャッター アイランド』(10)など、スコセッシ監督作でバラエティ豊かな役どころを演じてきたが、今回のベルフォート役は、一番型破りでクレイジーな男だ。「今回の役柄は、アメリカの偉大な文学のキャラクターではなく、ある1人の男の半生を描くということで、あの業界特有の文化を自由に扱うことができた。監督が僕たち俳優に自由を与えてくれたから、アドリブもたっぷりできたんだ」。
レオは、スコセッシ監督との仕事について「毎回新しい発見がある」と言う。「5回も一緒にやってきて気づいたことは、スコセッシ監督はストーリーよりも、人物像を大切にしているということだ。物語の起承転結よりも、キャラクターを重視して描く。『タクシードライバー』(76)や『レイジング・ブル』(80)もしかりで、まずキャラクターが存在し、彼がどういう人物かを見せていく。そのことを今回新しく発見したよ。本作を撮れる監督は、この人しかいないと思っていたけど、おかげで面白いものができた」。
レオは、本作について「ジョーダンの手記を08年に読んで、ずっとこの人物を映画化できないかなと思ってきた。人間の中にある、非常にダークな部分を描く点に興味を惹かれた」と話す。「いろんなビジネスにおいて、手っ取り早く大金を得ることができる業界は、そういう人間の欲を駆り立てるんだろうな。ウォール街では常にこういうことが起きていて、実際30年ごとに経済破綻を招いている。つまり、過去から全く学ばず、人を騙したりする行為が繰り返されているんだ。それについて警鐘を鳴らすという意味でもこの映画を作りたかった」。
ジョーダンは、カリスマ性あふれるオーラをまとっている。彼の熱烈なスピーチが、社員の心を鷲づかみにするシーンも印象的だ。「あのスピーチに関しては、どうやってやろうかとずっと考えていた。現場には、ジョーダンをコントロールする人、すなわち道徳的な指針を与えてくれる人は誰もいなかったんだ。僕自身も俳優として自由にやっていいということだったから、その雰囲気に完全に入り込んでいけたよ。まさに、即興も入り込み、ああいうシーンになった」。
また、ドラッグで骨抜きにされたり、激しいセックスシーンにも果敢にトライしたレオ。彼は「現場には、ローマの帝王みたいな気分で臨んだ」とのこと。「たぶんジョナ・ヒル(ベルフォートのビジネスパートナー役)もそうだったと思う。現場では、自分という存在がなくなっていたんだ。本作では、自分の俳優としてのイメージがどうとかは関係なくて、ジョーダンのキャラクターをいかに正確に出せるかを意識したので、かなりワイルドなシーンになった。でも、ドラッグやセックスに関しても、全部、彼の本に描かれていたものなんだ。やればやるほど役に成り切っていき、だんだん楽になっていった。だから、それらの行為もショッキングなものではなくなっていったよ」。
確かに、レオのクレイジーで突き抜けた演技は、見る者の心を鷲づかみにする。アカデミー賞の主演男優賞候補となったのもうなずけるというものだ。休業宣言をして、ファンを驚かせたレオだが、会見では「また、すぐに日本に戻ってきたい」と言ってくれた。まずは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を見て、レオの俳優としての底力を改めて実感していただきたい。【取材・文/山崎伸子】