井上真央「仕事では“天使”、プライベートでは“悪魔”だと言われます」
湊かなえの同名小説を、斬新なアプローチで映画化したサスペンス映画『白ゆき姫殺人事件』(3月29日公開)で主演を務めた井上真央。彼女は本作で、愛くるしいオーラを封印し、地味で冴えないヒロインに徹した。しかも、いろんな人の色眼鏡を通して語られる、多角的な人格を演じ分けている。井上にインタビューし、撮影裏話について聞いた。
彼女が演じたのは、化粧品会社で働く、実直なOL・城野美姫役。ある日、美人の同僚・三木典子(菜々緒)が殺害され、インターネットやワイドショーの加熱報道により、彼女に疑いがかけられていく。
どこにでもいるような地味で平凡なOL役に、彼女はどう臨んだのか?「元々、地味な方なので、そんなにああしよう、こうしようとは思わなかったです。ふっとその場に馴染んだりすることがわりと得意な方なので。クランクインの日の撮影が、社員の方々の前で自己紹介をするシーンでしたが、そこでもふっと存在を消すことを意識しました。それが面白かったです」。
常に女優として輝きを見せてきた井上が、自分自身を地味だと言い切るのは、少し意外であるが「普段から電車などに乗ってもばれないタイプなんです」とのこと。美姫役との共通点については「私は、もうちょっと社交的だとは思いますが、見ていて高校時代の自分を思い出しました。ただでさえ派手な仕事をしているので、普段は大人しくしていようとか、目立ったことはしないでいようと、当時は思っていましたから」。
美姫は、ある人の証言から見れば天使で、別の人の証言から行くと、魔女や悪魔のように見られている。たとえば井上自身は、どちらなのか?と聞いてみると「『仕事では天使で、プライベートでは悪魔だね』とよく言われます」と、いたずらっぽい笑みを浮かべる。「私って、元気ハツラツの明るい役が多いので、よくそういうイメージで見られるんですが、実際はわりと淡々としているというか。自分では普通のつもりなんですが『けっこうテンションが低いんだね』と、言われたりもします。けど、それを面白がったりするのも好きだし、スタッフの人をいじったり、いたずらをしたりするのも大好きなので、よく『悪魔だね』と言われています」。
映画初出演の菜々緒との共演シーンが印象的だが、彼女について井上は「菜々緒ちゃんはすごく明るくて真面目な方。映画に初出演ということもあり、本当に真面目に取り組まれていました」と好意的な印象を口にした。「地方ロケが多かったので、みんなとご飯に行ったりしましたが、私がお酒を飲むことが好きだと話すと、意外だねと言われました。実は菜々緒ちゃんは、見た目はお酒が強そうに見えるのに、一切、飲めないんです。また、普段はずっと家にいるとか、あんなに細いのにジャンキーなものが大好きとか、意外な面が多かったです」。
『八日目の蝉』(11)で第35回日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞し、演技力についてはお墨付きの井上。ヒロインを演じた『永遠の0』も大ヒット中で、本作の役柄も公開前からすでに話題となっている。主演を務める2015年度のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の撮影もスタート間近ということで、今の心境について聞いてみた。
「初めてのことをやる時、よく『堂々としているね』と言われるんですが、最初に踏み出す時は、ドキドキしています。これまでは、わりとネガティブなところもあったのですが、司会や舞台など、自分にとって初めてのことに挑戦した時、何事も一歩踏み出す勇気が必要だなと感じたんです。今は、作品を楽しみながら臨めたら良いなと思っています」。力強くそう語ってくれた井上真央。2014年も前途洋々だが、まずは最新主演映画『白ゆき姫殺人事件』での彼女の熱演に注目してほしい。【取材・文/山崎伸子】