手塚治虫『ブラック・ジャック』誕生にも影響を与えた!“劇画の父”辰巳ヨシヒロの功績とは?

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手塚治虫『ブラック・ジャック』誕生にも影響を与えた!“劇画の父”辰巳ヨシヒロの功績とは?

“劇画の父”とも呼ばれる辰巳ヨシヒロの半生に迫るドキュメンタリーアニメ『TATSUMI マンガに革命を起こした男』(11月公開予定)のトークイベントが7月14日に角川シネマ新宿で開催され、エリック・クー監督と、本作で6役の声を演じ分けた別所哲也が登壇。集まった観客からの質問に熱心に答えるなど、辰巳ヨシヒロの魅力をたっぷりと語ってくれた。

2009年「手塚治虫文化賞」を受賞した漫画「劇画漂流」を基に、大人が楽しめるエンタテインメントの可能性を追求し続け、葛藤と苦悩を繰り返した辰巳ヨシヒロの道のりを時代背景とともに描く本作。クー監督が辰巳氏を知ったのは、「劇画漂流」の英訳版がきっかけだとのこと。「先生へのトリビュートとして、先生の人生と、僕を触発してやまない先生の短編を交えた作品を作りたいと思った」とクー監督。神保町の喫茶店で辰巳氏と面会し、「アニメーションの知識はないが、これを天命と思ってやりたい」と話したところ、その熱意に打たれた辰巳氏からも「是非、やりなさい」との言葉をもらえたという。

声の演技で参加した別所は「一つの作品で6つの役を使い分けるということは、なかなかないこと。しかも声だけで演じるというのは、挑戦的な作品になると思った」とコメント。「国際的な舞台で、辰巳先生という日本の劇画作家を、僕も憧れているクー監督が撮り上げる。これは日本人として参加しないわけにはいかないと思った」とわき上がる思いを明かしていた。

日本のマンガ界に多大な影響を与えた辰巳氏だが、「その功績をどう感じるか」と聞かれると「50年代には、『劇画』という一大ムーブメントを築いた。60年代には、手塚治虫先生にも影響を与えて、その結果『ブラック・ジャック』や『アドルフに告ぐ』のようなタイプの作品を手がけるようになった」とクー監督。別所は「マンガやアニメが持っている可能性をぐっと広げて、ある方向性を作り上げた方。日本の巧み、クラフトマンシップを持った劇画作家だと思う」と語っていた。

最後にクー監督は「辰巳先生の魔術的な作風に触れてほしい」、別所も「辰巳先生の世界には、スタジオジブリにも通じるような同じような情熱を感じている。『アナと雪の女王』も素晴らしいですが、日本から生まれた辰巳先生の世界が、日本中に新しい熱気をもたらしてほしい」とアピールし、イベントを締めくくった。【取材・文/成田おり枝】

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