未成年の本格的なラブシーンは物議を醸す?16歳少女が発するメッセージは共感必至
アカデミー賞受賞のケヴィン・マクドナルド監督と、天才女優シアーシャ・ローナンがタッグを組んだ同名ベストセラー小説の映画化『わたしは生きていける』(8月30日公開)。『つぐない』(07)で13歳にしてアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたローナンが、本作では、従兄と関係を持つ16歳の少女デイジー役を熱演!初めて心とカラダを許せる相手と出会ったことで、デイジーの身に訪れる“変化”をローナンは見事に表現している。
こう書くと甘い恋愛ムービーと思われてしまうかもしれないが、本作は核爆発により第三次世界大戦が勃発したイギリスが舞台。戦争により穏やかな日常生活が剥奪され、絶望感が漂う終末世界が色濃く描かれている。そんな戦争直前、父親に見放されたデイジーが、叔母を頼って単身NYからイギリスの田園地帯へやって来るところから物語は始まるのだが、そこで従兄のエディと恋に落ちる…という設定だ。
従兄と関係を持つ16歳の少女という設定は、一見スキャンダラスな印象だが、デイジーとエディの恋愛は純粋そのもの。すぐ側で幼い弟妹が眠る中、真っ暗闇で体を重ねる2人の本格的なラブシーンも描かれるが、戦禍の中で互いが生きている証を確かめ合うかのような触れ合いは、むしろ切なく痛々しいほどで、10代ゆえのまっすぐな想いが胸に突き刺さってくる。
そうしたデイジーの複雑な胸中を表しているのが、本編を彩る楽曲だ。イギリスに来たばかりの当初、奇抜なパンクファッションに身を包み、仏頂面で反抗的な態度をとっていた頃の彼女が聴いていたのが、アマンダ・パーマー&ザ・グランド・セフト・オーケストラの「Do It with a Rockstar」 などの激しいロックナンバーが中心。一方、エディに心を許してからのデイジーは、ニック・ドレイクの「Which Will」 の穏やかなBGMが流れる中で、屈託のない年相応の笑顔を見せるのだ。初めて、愛する人に必要とされたことで“自分が生きていく居場所”を見つけた彼女の安らぎが象徴されている必聴のナンバーでもある。
また、こうした本作の世界観にちなみ、著名人に「それでも世界が続くなら、あなたの聴きたい曲は?」と題したアンケートを実施。ベット・ミドラーの「THE ROSE」をセレクトした歌手・手嶌葵は、「主人公デイジーが暮らした自然が溢れる家、優しく手を握ってくれる人が側に居る毎日が幸せで美しく映してあるこの映画を見れば、戦争という戦いがどんなに愚かで悲しいものか理解する助けになり、そして優しく誰かを愛したいと思えるかも知れないと感じました」とコメントし、本作のメッセージに深く共感した様子。その他にも、「この道」(作詞:北原白秋/作曲:山田耕筰)をセレクトした大林宣彦監督や、「Across the Universe」(ザ・ビートルズ)をセレクトした写真家・藤代冥砂ら、多数のクリエイターが絶賛のコメントを寄せている。16歳のデイジーのラブストーリーであると同時に、強烈な反戦メッセージを含んだ本作を、楽曲にも注意して鑑賞してみては?【トライワークス】