『舞妓はレディ』の上白石萌音は胎教からずっと音楽漬け!
『Shall we ダンス?』(96)の周防正行監督作『舞妓はレディ』(9月13日公開)で、800名の候補者のなかから、見事に主演の座を勝ち取ったシンデレラガール、上白石萌音。映画を見れば、澄んだ歌声や、「おいでやす」という純真でたおやかな笑顔に、誰もがくぎ付けになる。周防監督の期待に応え、舞妓として歌って踊っての華々しい映画初主演を飾った新星にインタビューした。
『舞妓はレディ』は、田舎からやってきた素朴な少女・西郷春子が、京都の架空の花街・下八軒で舞妓を目指す成長物語だ。周防監督は本作を、歌ありダンスありのミュージカルタッチのエンターテインメント作品に仕上げた。上白石は、主演に抜擢された時は、夢じゃないかと思ってびっくりしたと言う。「家族からも、『ドッキリ』じゃないの?って言われました。驚きしかなかったです」。
上白石萌音は本名で、妹・上白石萌歌と、姉妹揃って女優である。「母が音楽教師で、音楽が好きになってほしいということで、萌音です。“萌”は、萌えいずる、草木が芽吹くという意味。海外ではクロード・モネのイメージが強いらしく、外国人の方にも覚えてもらいやすい名前ですが、実は私、絵が下手なんです(苦笑)。そこは名前に合わなかったです」。
名は体を表すという通り、彼女の周りは音楽に溢れていたようだ。「母は、私がお腹にいる時からずっと歌を聴かせてくれたり、ピアノを弾いてくれたりしていたらしいです。私も歌が大好きで、散歩に出掛けて花を見つけては花の歌を歌ったり、海を見かけたら海の歌を歌ったりと、今もずっと歌っています。また、祖母もすごく歌が好きで、泊まりに行ったら歌ってくれたり、テレビでは演歌の番組が流れていたりしました」。
そんな日常から歌に囲まれてきた彼女だが、春子役を演じるにあたり、一からボイストレーニングを行った。「体の使い方や呼吸、声帯の開き方などを教えていただいたら、、今まで出たことのない音域の声も出るようになりました。最初は歌うことへの不安やプレッシャーもあったけど、今回の経験を通して、もっと歌が好きになりました。大好きなことをさせてもらって、本当にうれしかったです。歌っていれば、私は幸せなので」。まさに歌姫になるべくしてなった少女だ。
いちばん心に残っている撮影は、初めて春子が歌うシーンだ。「あそこは本当に現場での生歌を使っています。撮影当日は、こんなに緊張することはないというくらい緊張して、心臓がバクバクしました。絶対声が震えちゃうと思っていましたが、歌い始めるとどんどん楽しくなっていって。ピークのドキドキからすっと下がっていく体験は、初めてでした。周防監督からも一発でOKをいただき、やっぱり私は歌が好きなんだなと再確認しました。終わった後は脱力しましたが、あそこまで感情が乗せられたのは良かったなあと思います」。
まさに、ダイヤの原石という言葉がふさわしい上白石萌音。憧れの女優は井上真央とのことだ。「最初に衝撃を受けたのが、NHKの朝ドラの『おひさま』です。あんなに心にずっしりくるお芝居の仕方や、セリフの言い方ってすごいなあと。余韻がすごく残るんです。私もそういうお芝居がしたいし、いつか少しでも近づけたらなと思っています」。
サナギから蝶へ変わるように、春子が舞妓へと華麗に変身を遂げていく『舞妓はレディ』。本作は、女優・上白石萌音そのものの成長のドラマでもある。【取材・文/山崎伸子】