市原隼人は「デ・ニーロのよう」と三池崇史監督が分析

インタビュー

市原隼人は「デ・ニーロのよう」と三池崇史監督が分析

“型破り”という表現がぴったりの市原隼人×三池崇史監督作『極道大戦争』(6月20日公開)。第68回カンヌ国際映画祭・監督週間に正式招待され、世界の観客の度肝を抜いた本作は、ヤクザ×ヴァンパイアという普通なら結びつかない強烈なエレメントが融合し、化学反応を起こした快作となった。市原隼人と三池監督にインタビューし、その舞台裏について話を聞いた。

噛みつかれてヤクザ化した人々が、壮絶な死闘を繰り広げる。この斬新すぎる発想は、飲み屋の他愛もない話から生まれたと三池監督は語る。「酔った勢いで出た、無駄話です。噛まれたらヤクザになるなんて最悪だよね、みんながヤクザになったら困るけど、面白そうだねと。奇しくも、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と同日公開ということで、個人的には運命を感じています(笑)」。

三池監督は、『マッドマックス』に特別な思い入れがあるそうだ。「やっぱり男の子は好きですよ。最初の1本目は衝撃的で、インパクトが強かったです。いろんな意味で、映画を作る人間にとっては、宝物的な作品ですから。ハリウッドではなく、オーストラリアから闇雲に石を投げたという意味でもすごい。世界に向けてというよりも、自分のなかに思い切り投げつけた石だったと思います。その後、やたら規模がでっかくなりましたが」。

『極道大戦争』について市原は「こんなに楽しいものができるんだよ、というものを見せたかった」と熱意を訴える。「映画が商業になってきたけど、趣味で犬の作品を撮り、編集して、僕はこれが好きなんだ!と言っている人たちのためにも作ったような作品だと思う。本来のクリエイティブな部分でのもの作りという感じがします」。

市原は『神様のパズル』(08)以来7年ぶりに三池監督とタッグを組んだ。「三池組は、三池監督という常にぶれない軸がある。現場がみんな職人基質で、生半可なものを見せたくないというのが伝わってくるんです。なかなかない空気感が現場にあるので、大好きな現場です。僕も常に職人でいたいので」。

また、市原は「現場が終わってからごちゃごちゃ遊ぶんじゃなくて、いつも現場で遊んでいたい」と言う。「芝居で会話がしたい。やらされているというのが絶対嫌なので、みんながやりたいふうにやれたら良いなと願いながら、いつも現場にいるだけです。役者業は、自分遊びの延長線だと思うから。たとえば、1週間、イヌの気分で生きてみるとか、1週間、アメだけで生きてみるとかもそうで。小さい頃から好奇心旺盛で、いろんな人の気持ちになってみたかったんです。もちろん、相手の気持ちを100%わかる人間はいないと思うから、1%からこつこつ積み上げることしかできない。それをどこまでできるか、やっている最中が楽しいです」。

三池監督は市原について「とんがっているところは相変わらずだけど、より太くとんがっている感じがしました」と分析。「『俺は巻かれないぞ!』的な非常にワイルドな生き方をしているところが、相変わらず格好良いです。市原隼人は24時間、どこを切り取っても市原隼人。絶対的事実なのは、何十人いる現場でいちばん集中しているし、一瞬一瞬真剣に生きないともったいない!という迫力がある。だから、スタッフも真剣度が増すんです。この映画がこうなってしまったのは俺のせいではない(笑)」。

さらに三池監督は「市原隼人自身は、別の国のやんちゃな王子様みたいな気がします。実態はよくつかめていないけど、タレントではなく、役者なんです。ハリウッドでいえば、同じにおいを感じるのが、ロバート・デ・ニーロ。全然タイプは違うけど、よくわかんないところは同じ。よく、この芸能界で、彼のような生き方ができるなあと感心する。少し、特殊なにおいを感じます」。

互いに厚い信頼感で結ばれた市原隼人と三池監督。2人がいまの映画界に対して派手に殴りこみを入れた『極道大戦争』の威力は、劇場で確かめてみてほしい。【取材・文/山崎伸子】

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