役所広司と原田眞人監督、昭和天皇と戦争について熱弁
『駆込み女と駆込み男』(公開中)の原田眞人監督が手掛けた反戦映画『日本のいちばん長い日』(8月8日公開)の日本外国特派員協会(外国人記者クラブ)主催の試写会が、8月3日に都内で開催。10カ国以上、150名の外国人記者に向けて、役所広司と原田眞人監督が本作への思いを語った。
『日本のいちばん長い日』の原作は、昭和史研究の第一人者・半藤一利の傑作ノンフィクション。太平洋戦争末期に、終戦の舞台裏で身を挺して闘った人々の物語が綴られている。役所は陸軍大臣・阿南惟幾役を演じ、本木雅弘が昭和天皇役に扮した。
外国人記者から、劇中の日本政府の優柔不断さについて尋ねられた原田監督は「いまの安倍政権を見てもわかるように、国民性ですね。国立競技場(の問題)を見ていてもそうですし、いまも起きていることです」と、まずは安倍政権についてチクリと刺す。
続いて「ただ、この時代、戦争に関しては、最後まで戦わないとわからないという気持ちがあったのは確かです。多数決で決めた場合、確実にクーデターが起こることはみんなわかっていたので、最終的には聖断にもっていく。開戦の時はそれができなかった。戦争を止めることができたのは、昭和天皇、鈴木(貫太郎)さん、阿南(惟幾)さんの3人の顔が揃って初めてできたことです」と持論を交えて語った。
阿南陸軍大臣役の役所は「阿南大臣には、いろんな説があると思いますが、今回は昭和天皇のご聖断があって以降、終戦に向かって中堅の将校たちのクーデターを食い止めながら、なんとか戦争にピリオドを打った大臣として、板挟みになった苦悩を描くことが、今回の僕の役割だったと思います」と役作りについて述べた。
また、原田監督は、アレクサンドル・ソクーロフ監督作『太陽』(05)でイッセー尾形が演じた天皇について「不愉快な昭和天皇像だった」と言い、さらに、ハーバート・ビックスの著書「昭和天皇」についても「昭和天皇の話が歪められていて、事実とは違っている。真実よりもイデオロギー的なものを先行させるのには怒りを覚える」と嫌悪感を露わにし「僕はそういうものを是正していきたいと思った」と力強く語った。
役所は海外の観客について「これは、日本で起こった戦争を終わらせる話ですが、戦争を始めるのは簡単だけど、終わらせるのは非常に難しいことだと、海外の人も受け止めてくれるのではないかと思っています」と熱い思いを口にした。【取材・文/山崎伸子】