『岸辺の旅』の深津絵里と浅野忠信「愛情や絆が芽生えた」
第68回カンヌ国際映画祭ある視点部門で、日本人初の監督賞に輝いた黒沢清監督作『岸辺の旅』の初日舞台挨拶が、10月1日にテアトル新宿で開催。深津絵里、浅野忠信、小松政夫、柄本明、黒沢監督が舞台挨拶に登壇した。日本公開に先立ち、フランスでは9月30日に封切られ、大盛況とのことで、フランス大使館文化部映像放送担当官、ヌーレディン・エサディも登場し、主演の深津に花束を手渡した。
『岸辺の旅』の原作は湯本香樹実の同名小説で、夫婦の切ない愛を描いた作品。浅野は、深津について「役というよりは、深津さんに芽生えた愛情や絆はたくさんありました。深津さんじゃなければどうなっていたんだろうと。以前、三谷幸喜さんの作品(『ステキな金縛り』)で初めて共演させてもらって、そこから関係が始まってくれていたのかなと。それがこういう形で花開いて、想像以上の関係というか、絆を強めることができました」と感謝した。
深津も「ありがたいお言葉の数々、うれしいですね」と照れる。「愛とか絆は、形のあるものではないのに、絶対的に強いものですし、この世から消えてほしくない。愛こそがすべてだとすごくよくわかる作品だと思います。黒沢監督がそれをストレートに、神聖に、とても強く伝えていらっしゃるのが、とってもうれしいなと。こういう映画が観たかったなと思いました」。
黒沢監督作の常連である柄本は「亡くなった相米(慎二)監督が、『黒沢くんは天才だよ』と言ってました」と振り返る。黒沢監督は、相米監督の助監督を務めていた。柄本は「僕、NGをものすごくいっぱい出しました。でも、すまないという気持ちがあまりなくて。気に入らない監督の前でNGを出すのはものすごくしゃくにさわるのですが(苦笑)。でも、申し訳ありませんでした!」と何度も頭を下げた。
黒沢監督は笑いながら「柄本さんクラスの俳優になるとNGも良いので、どっちを使おうかと、編集でも迷ったという感じです」と言うと、柄本はかなり恐縮していた。【取材・文/山崎伸子】