菊地凛子、日本好きな監督と親密な関係に
『バベル』(06)の演技で第79回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、世界に知られる存在になった菊地凜子。その彼女が主演するスペイン映画『ザ・マップ・オブ・サウンド・オブ・トウキョウ』(日本公開未定)がカンヌ国際映画祭でこのたび公式上映された。
公式上映に先立って、菊地とイザベル・コイシェ監督の記者会見とインタビューが行われたのでその模様をお届けする。
――なぜ東京を舞台に選んだのですか?
イザベル・コイシェ「日本文化が好きなのです。日本の現代小説、食べ物も好き。ワサビを常備しています(笑)。ラーメンも美空ひばりも大好きです。とんかつだけは苦手ですけど。何回か日本に行ったことがありますが、三年前に東京国際映画祭に行きここを舞台に映画が作れると思いました。東京という街には様々なコントラストがあります。それが面白いと思ったのです」
――この作品に出ようと決めた理由は?
菊地凜子「監督の作品を3本ほど見ていて、女性の感情を丁寧に描く方だと思っていました。いつかご一緒できたら、とは思っていたので、脚本を読んで出ようと決めました。ヌードやセックスシーンもあり、殺し屋という背景を持つ複雑なキャラクターなので躊躇もありましたが、そういう“私にはできない、難しい”と思う役ほどやるべき時期だと考えていたところなのでお引き受けしたんです。タイミングが良かったんですね」
――冒頭のシーンで、依頼主となるビジネスマンが外国企業の接待のため寿司の女体盛りを用意し、依頼主は女体盛りに嫌悪を示します。どうも“欧米人のイメージする日本”という感じがぬぐえないのですがいかがでしょうか?
コイシェ「LAに行った時に女体盛りをみました。そしてアメリカ人はそれが日本の当たり前のものだと思っていることも知ったのです。彼らには日本人は“自分たちと違う”という先入観があり、それを正そうとは思わないのですね。というよりも、女体盛り、というもの自体が男性の視点だと思うのです。女性はセックスの対象であり人間として個人としては興味がない、という視点ですね」
菊地「確かに日本人から見るとそれはないだろうというシーンもあります。私もこれは変じゃないかと言ったところもありますが、では日本を描くのは日本人でなくてはいけないのでしょうか。映画は虚構の世界ですよね。その虚構に観客は自分のリアルを重ねて感動するもの。だから監督の見た日本を描けばいいと思います。その方が世界が広がると思うんです」
カンヌに入る前、バルセロナで監督の家に泊まって、本作の宣伝のためのインタビューを30件ほどこなしてきたという菊地凜子。「私の家に泊めるのはサラ・ポーリーと凜子だけ」といわれる親密な関係を監督との間に築いたようだ。【シネマアナリスト/まつかわゆま】