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M・ナイト・シャマラン監督、“どんでん返し”を期待される心境を告白

インタビュー

M・ナイト・シャマラン監督、“どんでん返し”を期待される心境を告白

M・ナイト・シャマラン監督がスリラー映画に戻ってきた!最新作『ヴィジット』(10月23日公開)で描かれるのは、人里離れた祖父母の家へと訪れた姉弟を襲う不気味な出来事の数々。そして目にするのはシャマラン監督の真骨頂ともいうべき、衝撃の結末。ゾクゾクするような恐怖とともに、どこかワクワクするような面白さに満ちた世界へと誘ってくれる。シャマラン監督に、「描きたいスリラー映画」とはどんなものなのかを聞いた。

主人公となるのは、好奇心旺盛な姉弟。母親の実家を訪れるや、優しい祖父と料理上手の祖母に迎え入れられるが、次第に祖父母の不可解な行動に恐怖を感じ始める。「知らない場所に行くヘンゼルとグレーテルのような感じだね。子どもたちが家を出て、温かくて完璧と思える場所に行くけれど、そこがどんどん恐怖の場所に変わっていくんだ」と童話も着想のきっかけとなった様子。

ドアを引っかいたり、壁に向かって高笑いをしてみたりと、このおばあちゃんがめっぽう怖い。「年配の家族に恐怖を持ってしまうというのは、誰にでも思い当たるものかもしれない。それは恐らく、老いることへの恐怖からきていると思う。老いることは恐怖であり、嫌悪感もあるかもしれないし、さらにいうとちょっと笑えるものであったりもする。例えば今回の映画で、おばあちゃんをドアの前に立たせてみたんだ。するとなぜか、それだけで怖いんだよね!」と本作で描かれるのは、私たちの根底に潜む“老いることへの恐怖”に訴えるものだという。

恐怖とともに笑える要素も盛り込まれているが、「スリラーを作り出す上でもユーモアが大切だ」とシャマラン監督。スリラー映画における笑いの必要性についてどのように感じているのだろうか。「いまだに驚かされるのは、偉大な映画というのはすべて笑いのある映画だということ。例えば僕は『ジョーズ』(75)が大好きなんだけれど、あれは笑いもある映画だと思う。前2作の『エアベンダー』(10)と『アフター・アース』(13)ではできなかったんだけれど、映画には観ていてふっと気持ちが軽くなったり明るくなったりするような、ポジティブな要素が必要だと感じている」と笑いの重要性を解説。

「だってデートをしていても、自分のトラウマ話やヘビーな話ばかりしていたら、相手のことをリスペクトすることはあっても、もう次のデートはしたくないと思うだろう?僕は映画の観客はデートをする相手だと考えている。深刻な話題の中にも楽しさやウキウキできる瞬間があれば、また次のデートへと繋がるんじゃないかな」とにっこり。しかしながら、「無理やり入れ込んだ笑いではダメだ」と続ける。「『ヴィジット』の姉弟は恐怖に陥れられるけれど、その設定の中でも彼らは人生を楽しんでいるよね。キャラクターが人生のポジティブな部分を感じていれば、笑いの要素は自然と湧き出てくるものだと思ったよ」

独自の世界を紡ぎ続けているシャマラン監督。『シックス・センス』(99)で世界中を驚かせて以降、“どんでん返し”を期待される監督にもなってしまったが、「自分への期待値が特定の枠に当てはめられてしまっていると感じることもあるよ」と正直な気持ちを吐露する。「僕の描くものはもちろん、複雑なストーリーのあるサスペンスではある。でもそれ以上のものがあることもわかってほしいと思っていて。いわば、B級のテーマにスピリチュアルな角度で切り込み、A級のドラマティックな演技力で見せる映画。あと僕がこだわりたいのは、ポジティブさなんだ。それも単純にハッピーなだけではなく、最終的に主人公と観ている人たちに力を与えらえるような要素を入れ込んでいきたいと思っているよ」

目力たっぷり、エネルギッシュに映画への思いを語る。エネルギーの源を聞いてみると「恐ろしいことがある世界でも、やはり僕はこの世に人間が存在することはとても美しいことだと思っていて。それを映画を通して表現できることかな」と微笑んだ。「大事なのは自分が好きだと思う映画を心を込めて作ること。『観る人にこう感じてほしい』と観客を操作しようとした瞬間に、この世からしっぺ返しを食らうと思っているんだ」といい、本作についても「大好きな映画ができた」と胸を張る。是非ともスクリーンで、シャマラン監督7年ぶりのスリラーを楽しんでほしい!【取材・文/成田おり枝】

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