『ミケランジェロ・プロジェクト』の原作者がジョージ・クルーニーとの密なコラボレートを語る

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『ミケランジェロ・プロジェクト』の原作者がジョージ・クルーニーとの密なコラボレートを語る

ジョージ・クルーニーが製作・監督・脚本・主演を務めた渾身の1作『ミケランジェロ・プロジェクト』が11月6日(金)から公開される。今回、彼の心を突き動かしたのは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツ軍により強奪されたヨーロッパ各国の美術品の奪還に当たった特殊部隊“モニュメンツ・メン”の足跡を取材したノンフィクションだった。映画製作にも関わった原作者のロバート・M・エドゼル氏が来日し、インタビューに答えてくれた。

エドゼル氏は、脚本段階から関わり、撮影現場にも何度も足を運んでジョージとコラボレートし、ジョージの他にモニュメンツ・メン役を演じたマット・デイモン、ビル・マーレイ、ケイト・ブランシェットなどのキャスト陣とも交流を深めた。

「それぞれの役者さんには、プレゼントをもっていった。たとえばケイトには、彼女が演じたローズが実際に書いた手紙のコピーを、また、ジョージたちにも存命のモニュメンツ・メンからの手書きの手紙を渡したんだ。そういったものを渡すことで、役に対する洞察を深めてもらえるんじゃないかと思ったからだ。彼らはとても感謝してくれたし、僕も彼らと深く関わり、映画作りに参加できたことをとてもありがたく思ったよ」。

原作本「ナチ略奪美術品を救え」では、エドゼル氏が、当時98歳で存命だったS・レイン・フェイソン・ジュニアを尋ねた時のエピソードが印象的だ。エドゼル氏に会った彼は「あなたに会うのをずっと待っていた」と彼の両手をつかんで語り、その10日後に息を引き取った。「息子さんにアポイントメントを取った時、『父に会ってもずっと寝ているだけだから、無駄だと思いますよ』と言われたんだ。でも、実際にお会いしたら、4時間も起きてやりとりをしてくださったので、立ち会った息子さんも非常に驚かれていた」。

さらに、その後日談が味わい深い。「本には書いていないけど、僕は葬儀にも行った。4人の息子さんが全員揃っていたので、『10日前は、あんなに元気そうだったのに何があったのですか?』と聞いたよ。そしたら僕と出会った翌日に、レインさんは『旅立つ準備ができた』と息子4人に電話をしたそうだ。それは、モニュメンツ・メンの物語を受け継いでくれる僕と出会い、ようやくバトンを渡せたという意味だったのかもしれない。僕はその話を聞いて、ぐっと来た。実は、彼に会うまで本を書くことを決めていなかったけど、レインさんとの運命的な出会いにより財団を設立し、本を書く決意を固めたんだ」。

モニュメンツ・メンのなかには、戦地で命を落とした人もいる。劇中でもジョージ演じるフランクが、美術品は、果たして人1人の命の尊さに値するのか?と問われるシーンがあるが、エドゼル氏自身はどう思っているのか。

「ロマンティックな答えをすると、答えは『Yes』だ。炎のなか、未来の世代のために美術品を救いに行ったら、それはドラマティックだし正しい行為だと言える。でも、たとえば、僕が息子の命とモナリザを天秤にかけた時には、『No』と言うだろう。ただ、あるモニュメンツ・メンの1人が、こんなことを言っていた。『どんな素晴らしい作品でも、人の命には変えられない。でも、命を落としてでも大義を叶えようとするのであれば、ありだと思う』と。きっと彼らは自身がアーティストで、美術の教授でもあった。そして、優れた芸術は、世界のみんなのものであるべきだという考え方の人たちだったから、それらを守ろうと必死だったのだと思う」。

私利私欲のためではなく、世紀の美術品を後世に残すために身を捧げたモニュメンツ・メンたち。レオナルド・ダ・ヴィンチやフェルメール、レンブラントなどの名画たちが、いまもなお、人類の至宝として現存するのは、彼らのおかげなのだと、『ミケランジェロ・プロジェクト』を観て初めて知った。その崇高な志を受け継いで世に知らしめたロバート・M・エドゼル氏と、映画化したジョージ・クルーニーに心から敬意を表したい。【取材・文/山崎伸子】

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