第73回ゴールデン・グローブ賞、サプライズだらけのノミネートを分析
本格的な映画界の賞レースシーズンが到来し、各賞の受賞結果が続々と発表される中、2大映画賞の1つである第73回ゴールデン・グローブ賞(以下GG賞)のノミネート結果が、ロサンゼルス時間の10日午前5時(日本時間の同日22時)に発表された。
最もメディアを騒然とさせたのが、オスカー有力候補と言われていた『ブラック・スキャンダル』のジョニー・デップが主演男優賞から漏れたことだが、E!オンライン、CBSニュース、シカゴ・トリビューン紙、ピープル誌、moviefone.comなど15媒体以上の見解をもとに、今回のノミネーションについてまとめてみた。
ノミネートの中でもかなりのサプライズだったのは、アクション映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』がドラマ部門の作品賞に選ばれたことだ。ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞で作品賞など3冠に輝き評判が高いものの、同作はアクション映画。一方で、マット・デイモンが火星に取り残され、ほぼ一人芝居でサバイバルを展開するドラマ『オデッセイ』がコメディ・ミュージカル部門に選ばれたことも、大きなサプライズとなっている。
また両作はジョージ・ミラー監督、リドリー・スコット監督が共に監督賞にノミネートされているが、『スティーブ・ジョブス』のダニー・ボイル監督を差し置いて、ミラー監督がノミネートされたことも大きなサプライズとなっており、これらの結果が、娯楽大作を避けがちなオスカーにどこまで影響力を与えるのかが、注目されている。
GG賞常連だったはずのスティーヴン・スピルバーグ監督のドラマ『ブリッジ・オブ・スパイ』は作品賞にノミネートされなかったが、同じく作品賞に選ばれなかった『スティーブ・ジョブス』と共に興行成績がふるわなかったことが関係しているとすれば、作品賞の場合、選択の基準が異なるオスカーでは違った結果が生まれてくる可能性も高い。
他には、既に各賞を騒がせている『ストレイト・アウタ・コンプトン』がノミネートされていない代わりに、あまり話題になっていない『Trainwreck(原題)』がノミネートされたこと。『ブリッジ・オブ・スパイ』ではマーク・ライランスが助演男優賞にノミネートされたが、同賞で4度の受賞経験を持つトム・ハンクスが主演男優賞にノミネートされなかったこと。オスカーノミネートが確実視されていた全米で大ヒット中の『クリード チャンプを継ぐ男』が作品賞、そしてマイケル・B・ジョーダンが主演男優賞から外された一方で、シルヴェスター・スタローンが助演男優賞にノミネートされたことも、想定内ではあるが少々意外な結果となった。
現時点で他の各賞を席巻し、オスカー最有力候補の一つと言われている『スポットライト(原題)』は作品賞(ドラマ部門)、監督賞、脚本賞にノミネートされつつ、ノミネートが確実視されていたマイケル・キートンやマーク・ラファロら俳優陣が総スカンを食らったのは想定外。一方で、マークが『Infinitely Polar Bear(原題)』で主演男優賞にノミネートされたことには、メディアだけではなく当の本人も驚きを隠せないようで「『Infinitely Polar Bear』でノミネートされるなんて!」と驚きのツイートを発信している。
ほとんど話題になっていなかった『Dearダニー 君へのうた』で年老いたロッカーを演じたアル・パチーノがコメディ・ミュージカル部門の主演男優賞に選ばれて貫録を見せつけた一方で、ロサンゼルス及びボストン批評家賞で主演女優賞を受賞している『45 Years』のシャーロット・ランプリングはノミネートされなかった。GG賞に29回ノミネートされ8度の受賞を果たしているメリル・ストリープが年老いたロッカーを演じた『幸せをつかむ歌』でノミネートされずに、『Trainwreck(原題)』のエイミー・シューマー、『Spy(原題)』のメリッサ・マッカーシー、そして『The Lady in the Van(原題)』のマギー・スミスがコメディ・ミュージカル部門の主演女優賞にノミネート。
作品賞や主演男優賞、監督賞などでノミネートを果たしている『レヴェナント:蘇えりし者』で、演技力が高い評価を得ているトム・ハーディがノミネートされなかった。そしてクエンティン・タランティーノ監督作『ヘイトフル・エイト』が作品賞にノミネートされていないことや、キャリー・マリガンら『Suffragette(原題)』そして前評判の高かったベニチオ・デル・トロらの『ボーダーライン』が総スカンを食らっていることなども、サプライズとして挙げられている。
今回は、ブラッド・ピットがプロデュースした『マネー・ショート 華麗なる大逆転』が大健闘で、作品賞、脚本賞及び、クリスチャン・ベールとスティーブ・カレルがコメディ・ミュージカル部門の主演男優賞でダブルノミネートされているが、『キャロル』でルーニー・マーラとケイト・ブランシェットも、主演女優賞部門でダブルノミネートされており、すい星のごとく現れたスウェーデン人女優のアリシア・ヴィキャンデルが、『リリーのすべて』でドラマ部門の主演女優賞に、『Ex Machina(原題)』では助演女優賞にダブルノミネートされていることなどから、主演、助演の境界線があやふやなものもあり、オスカーではどのような結果になるのか、注目されている。またアニメ部門では、大ヒット作『ミニオンズ』が外されているのも大きなサプライズとなった。
サプライズが多いということは、まだまだ混戦模様が続いているということ。大どんでん返しを含めた、今後の賞レースの行方が楽しみになってきた。なお、授賞式は現地時間の1月10日にロサンゼルスのビバリーヒルトンホテルで開催され、4度目となるリッキー・ジャーヴェイスが司会を務める。【NY在住/JUNKO】