「借金を踏み倒してでも生きろ!」『蟹工船』のSABU監督訴える

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「借金を踏み倒してでも生きろ!」『蟹工船』のSABU監督訴える

不況の逆風を追い風にしているのが、7月4日の公開が待たれる、プロレタリア文学の名作の映画化『蟹工船』だ。6月12日に、メガホンをとったSABU監督、作家・評論家として活躍する高橋源一郎、そして本作の企画プロデューサー・豆岡良亮が、本作にまつわるティーチインを行った。

場所は、高橋源一郎が教授を務める明治学院大学。ゲスト陣は集まった学生たち約200人を前に、「蟹工船」という題材を、文学と映画の両方の視点から語っていった。

SABU監督は、「3年前、ベルリンに留学していたので『蟹工船』のブームは知らなかった。(日本に)戻ったら不況で、俺も仕事がない。原作を知らなかったので、映画の話が来たとき“蟹光線”という動物ものかと思った(笑)」と、まずは笑いから入り、その後「マイナスからスタートラインに立つ原作のメッセージが現代に通じると思いました」と語った。

映画オリジナルの首つりのシーンについては、「“自決”を“自分で決める”という前向きな団結の伏線として描きました。2〜300万という金額で首を吊る人も多い今、踏み倒してでも生きろ!と思います」と力強く語った。

豆岡プロデューサーは、「主義主張を映画にしようとするとハードルがある。いま『蟹工船』が受け入れられているのは、悲惨な状況ではなく、メッセージや本質自体が通じているからだなと。貧困や厳しい労働を肉体で知らない若い世代は貧困格差のリアルさより、いまの閉塞感を感じて『どうせ変わらないのでは?』から始まっている気がします。蟹工船の『もう一度、立ち上がれ!』は、現代社会へのメッセージにつきると思います」

学生たちから、高橋教授に「小林多喜二の原作と映画を比較した意見」が求められると、「原作には悲惨な状況の中、『疲れたから寝る』を繰り返すモノクロのイメージをもっています。でも、そんなのは映画で観たくない。命の軽さや悲惨さを描いたら暗くなるだけで、そのままだと辛く、映画にするには仕掛けが必要。本を読み込むと、小林多喜二には真面目なだけじゃなくユーモアもある。どこかで笑わないとね。文化としての『蟹工船』と映画としての『蟹工船』は別物。文化と映画の美しいコラボレーションとなったと思います」

集まった学生からのアンケートによると、原作を読んでいる人は2割弱(約50名)。映画に対する評価はとても高く、SABU監督の心意気は、不況のいまを生きる現代の若者たちにはストレートに響いたようだ。「言いわけしても進まない。どうなりたいか考えて行動すればどんどんよくなる」というメッセージを映画に込めたというSABU監督。若者たちよ、ぜひ『蟹工船』を観て、不況なんか蹴散らして前向きに行動してみないか?【MovieWalker】

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