松山ケンイチと北川景子が語る森田芳光監督作の魅力

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松山ケンイチと北川景子が語る森田芳光監督作の魅力

故・森田芳光監督のデビュー作『の・ようなもの』(81)の35年後を描く『の・ようなもの のようなもの』(1月16日公開)で、長年、森田監督の助監督を務めてきた杉山泰一監督の下に、森田組のキャストやスタッフが集結!主演を務めた松山ケンイチと、ヒロインを演じた北川景子にインタビューし、改めて感じる森田作品の魅力について語ってもらった。

松山が演じたのは、30歳で脱サラした冴えない落語家・志ん田(しんでん)役。彼は、以前に一門にいた兄弟子・志ん魚(しんとと/伊藤克信)をもう一度高座に立つよう説得するため、2人でおかしな共同生活を始める。北川は、志ん田が思いを寄せるヒロイン、夕美役を演じた。

松山は、35年ぶりに『の・ようなもの』の続編が製作されることを聞いた時、とても喜んだと言う。「森田さんが亡くなって、森田組のキャストもスタッフももう集まれないと思っていたので、また、みんなでできるんだということに感動しました。役柄上、落語をしなければいけなかったのでプレッシャーはありましたが。落語がメインな話じゃないので、大丈夫かなと思いました」。

森田監督作『間宮兄弟』(06)で映画デビューを果たした北川も同じ思いだった。「森田さんが亡くなった時、私はまだ若かったし、もっともっと映画を残してくださるものだと思っていたので、これで終わってしまうのかと本当に寂しかったです。だから、今回のヒロイン役は光栄でしたし、入ってみるといつもの温かい現場で、楽しく終わりました」。

森田監督に何度も呼ばれたごひいきスターの2人。改めて森田監督作の魅力についても聞いてみると、松山はこう答えてくれた。

「独特だと思うのは、人間の面白さです。森田さんは『特別にギャグやボケなどをしなくても、生きているだけで面白いんだ』と言っていました。確かに、森田作品に出てくる人たちがそうで、くすっと笑わす何かを持っているんです。真剣に生きていて、それが面白く見えるのが森田作品の特徴だと思います。すごく人間自体を愛している、温かい目で見ていたというのが、すごく印象に残っています」。

北川は、森田組の現場の心地良さを振り返った。「作品はベタな笑いよりは、ただリアルに生きているだけなのに、はたから見ると面白いんです。また、現場がなごやかで温かくて、笑いが絶えない現場でした。有名な役者やスタッフを使うことよりも、自分とずっとやってくれる人や、一度いっしょにやった仲間を大切にする方で、組とかファミリーという意識が強かった気がします」。

2人とも森田組には特別な思いを感じている。松山は、俳優でやっていこうと決意を固めた作品に『男たちの大和/YAMATO』(05)を挙げるが、同作を手がけた角川春樹プロデューサーが、森田監督との出会いを導いてくれたと言う。「角川春樹さんは、『男たちの大和』をやらせてもらってから何本か呼んでくださり、そのなかの1本が森田さんの『椿三十郎』(07)でした」と感慨深い表情を浮かべる。松山は同年公開の森田監督作『サウスバウンド』(07)、森田監督の遺作『僕達急行 A列車で行こう』(12)にも出演した。

北川も『間宮兄弟』で森田監督から言われた言葉が忘れられないそうだ。「『間宮兄弟』のクランクアップで、森田さんにお花を渡す時、もう森田さんに会えないと思い、悲しくて泣いていたら、森田さんが『あなたは女優を続けるべきだ。やめないで。また会えますから』と言ってくださって。だから、続けていこうと思いました」。北川は、その後、森田監督作の『サウスバウンド』(07)と『わたし出すわ』(09)に出演した。

森田芳光監督からたくさんのものを受け取った松山と北川が、森田イズムを受け継ぐ杉山監督の下で、どんな人間ドラマをつむぎ上げたのか?『の・ようなもの のようなもの』は、数多くの人々の思いが投影された、素敵な作品に仕上がった。【取材・文/山崎伸子】

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