安田顕「浮浪者に間違えられた」ネタに麻生久美子が爆笑

主演なのに脇役!?　人気演劇ユニットTEAM NACSの舞台俳優にして、映画やドラマで引く手あまたの個性派俳優である安田顕の主演映画『俳優 亀岡拓次』(1月30日公開)は、そういうトリッキーな設定なのだ。本作で安田は、亀岡拓次というペーソスあふれる脇役俳優の悲喜こもごもを体現した。そんな安田顕と、居酒屋の女将・室田安曇役を演じた麻生久美子にインタビュー。初共演となった2人が、爆笑の撮影裏話を明かしてくれた。

安田は、待望の主演映画のオファーに喜んだという。「最初に、『映画の主役のお話が来ています』と言われた時、言い終わらない“す”の時点で、『やります！』と即答しました。それで脚本を読んだ時、どうして僕なんだろう？と思いましたが、『是非、やらせてください』と言いました。もちろん、断ることなんてないのですが、やっぱり毎回『なぜ、僕なんだろう？』とは思ってしまうんです」。

主演ということでほぼ出突っ張りだった安田は、心から撮影を楽しんだよう。「主演なんてなかなかできないことですから。僕が作品に参加させていただく時は、主役の方やその時のシーンのお相手の方とお仕事をして、そのまま帰るというパターンが多いんです。今回は、麻生さんを含め、これだけそうそうたる方々と毎日お仕事ができて、いろんな方たちのアプローチを見せていただくことができました。そんなことができる現場は初めてだったので、実に楽しかったです」。

麻生演じる安曇は、男好きのする、見るからにチャーミングな女性だ。客と共にほろ酔い状態になる姿も実にかわいらしい。「安曇役については、わりと親近感はもっていました。子どもがいたという設定ですし。いろいろと考えて役を作ったという感じではなかったです」。

いろんな組に呼ばれる名バイプレーヤーである亀岡役なので、安田も劇中でバラエティあふれる役どころに扮している。「ホームレスの役をやった時、ぽかぽかと暖かかったんです。黙って死んでいる役だったので、ただ寝ていれば良かったのですが、カメラのセッティング中、『楽にしていてください』と言われたので、そのまま動かずに寝ていたんです。そしたら、通りがかりの人が『こんなところで何やっているんだよ。誰か言わないのかね？』と言われて。どうやら本物に間違えられたらしいのですが、それはそれで良かったなと(笑)。果報は寝て待てですから」。

麻生は「アハハハ」と屈託なく笑う。「安田さんのシーンはどれも良かったのですが、特に、フィリピンの女性とのやりとりがすごく面白かったです。あそこは観ていて、楽しかったですね。衣装でいえば、アラブのシーンが好きです。すごくお似合いでした」。安田は「うれしい！じゃあ、これからアラブの衣装を着てきます」とノリノリに言うと、麻生は「アハハ。それ、絶対に思ってないですよね」と突っ込む。

安田は、麻生の印象について「以前出演された『泣くな、はらちゃん』（13）で、メガネをかけた、無駄に暗い女の人を演じていましたよね。あれは面白かったのですが、今回の安曇と同じ人だとは思えないです。あの役も素晴らしかったけど、全然違うので」。

麻生も、安田のカメレオン俳優ぶりにうなる。「安田さんだってそうです。全部の出演作を観たわけじゃないんですが、観る作品ごとに本当に印象が変わりますよね。だから、クレジットで確認しないとわからないくらいです」。

安田は「そこなんですよ。今回もロケ現場で『何でしたっけ？何に出ていましたっけ？』と言われたりするんです。それを、聞こえないようにするのが大変でした(笑)。長野のフィルムコミッションの方々もすごく優しくしてくださったんですが、ある居酒屋さんでは『応援しています。主役ですよね？良かったね。これをもっていって』とノシ紙をつけた差し入れをくださったのですが、『亀岡拓次』だから、『安岡さんへ』と書いてあったんです(苦笑)」。

麻生は笑いながら「役の印象が強いんですよ。でも、その方が良いです。素敵です」と言うと、安田は「そうですか？ありがとうございます。でも名前も思えていただけるように頑張ります(笑)」とうれしそうに語った。

是非、『俳優 亀岡拓次』の劇中の安田顕の七変化ぶりにも期待していただきたい。【取材・文/山崎伸子】