アンジーに見出されハリウッドデビュー!MIYAVIの素顔は?

インタビュー

アンジーに見出されハリウッドデビュー!MIYAVIの素顔は?

アンジェリーナ・ジョリー監督の反戦映画『不屈の男 アンブロークン』(2月6日公開)で、ワールドワイドに活躍するギタリストMIYAVIが、俳優としてハリウッドデビュー!彼が演じたのは、ひと際、異彩を放つヒールだ。MIYAVIにインタビューし、本作に挑んだ思いを語ってもらった。

『不屈の男 アンブロークン』の主人公は、ベルリンオリンピックに出場したアスリート、ルイ・ザンペリーニ(ジャック・オコンネル)だ。第二次世界大戦によって爆撃手となるが、救助活動に向かう船で遭難。47日間の壮絶な漂流体験をした後、日本軍の捕虜となる。MIYAVIは、ルイを執拗に虐待するサディスティックな収容所署長・渡辺伍長役を演じた。

内容が内容だけに、いろんな波紋を呼んでいた本作。MIYAVIは、最初にオファーをもらった時は、躊躇したそうだ。「役者としての経験がない上に、音楽家としての活動もあるので、原作の内容も含め、やはりリスクは感じました。自分の生まれた国のネガティブなサイドを演じたくはなかったし、アンジーと会う前までは、受け入れるつもりはなかったんです」。

でも、実際にアンジェリーナと会って、出演の決意を固めた。「アンジーから、ルイ・ザンペリーニ氏の生き方、人を守るために生き抜くということ、そして人を赦すという境地にたどり着く強さをメッセージとして届けたいと伝えられ、出演を決心しました。現場でも彼女は監督として先頭に立ち、情熱とモチベーションを持って、キャストやスタッフとまっすぐ取り組んでいました」。

MIYAVIは、実際にルイ・ザンペリーニ本人にも会い、いろんなことを考えたそうだ。「戦争という極限の状態において、100人いれば100人のドラマがあったと思うんです。僕は、ルイや、彼と一緒に収容所で過ごした人にも会ったのですが、今ではみなさん日本好きだし、収容所で友達ができたり、後に日本人の女性と恋に落ちて家庭を築いたりした人もいたそうです。今回、一辺倒な悪役ではなく、人間としての葛藤や脆弱さも表現できたらとアンジーともたくさん話し合いました。オーケストラの一部のような感覚で、役を全うできればと」。

演技に初挑戦した現場で、MIYAVIは、とことん自分を追い込んだ。「とにかく演技をしないということ、自分のリアルな感情をどこまで入れるかが勝負でした。オン、オフのスイッチがあるわけではないので、ある種、ずっとキャラクターに入り込んでいました。竹刀なんて使ったこともなかったけれど、街に出かける時も、ずっと竹刀を持っていましたね。撮影現場でも、他のアクターや、日本軍のエキストラの人たちともほとんど話をしませんでした。正直、入り込みすぎて苦しかったし、終わってからは、抜けるのに本当に時間がかかりました」。

公開に先立ち、日本で湧いた否定的な評価について、彼は冷静にこう受け止めた。「賛否両論の声は、特に国内で聞こえてきました。ただ、海外ではゼロでした。それは、たとえば『シンドラーのリスト』(93)を観てドイツを嫌いにならないのと一緒で、結局ドイツがそのことを乗り越え、いまのドイツという国を作ったことを僕たちは認識している。歴史の1ページとして、決して繰り返さないことの学びとして、僕たちは観るわけじゃないですか。それと一緒ですね。実際、ルイもみんなも日本が好きですから。なぜかというと、その後、日本がしてきたことに対しての認識があるからです。だから、僕は、完璧ではないけれど、日本という国の評価を感じましたし、それを伝えるということでも、今回の作品が作られた意味があるのではないかと思っています」。

アンジェリーナについては、“強い女性”という印象は全く変わらなかったと言う。「人としてすごく深くて大きな人です。彼女は国連の組織とともに難民支援の活動をやっていて、僕も彼女の紹介で、レバノンに難民を訪ねたことがあります。それこそ世界的なスターだけど、いろんなところに足を運んでいますし、実際に行動している。この映画もその活動の1つだと思います。未来のために、次の世代のためにどういうものを作るべきかを、いつも考えている。だから僕も、この作品で、そのビジョンに少しでも共鳴できればと。彼女からたくさん学ばさせてもらったし、リスペクトしているアーティストの一人です」。

『不屈の男 アンブロークン』は、彼にとって鮮烈な俳優デビュー作となった。海外で活躍しているだけのことはあり、その志は強く、広い。アーティストとしてだけではなく、今後、一俳優としても彼のいろんな顔を見たいと思う。【取材・文/山崎伸子】

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