リリー・フランキーと橋本愛が語る、異色すぎた現場|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
リリー・フランキーと橋本愛が語る、異色すぎた現場

インタビュー

リリー・フランキーと橋本愛が語る、異色すぎた現場

ピュリッツァー賞作家アンソニー・ドーアの同名処女短編集の1編を映画化した『シェル・コレクター』(2月27日公開)で共演したリリー・フランキーと橋本愛にインタビュー。この、静謐でエキセントリックな物語を紡ぎ出したのは、『美代子阿佐ヶ谷気分』(09)の坪田義史監督。リリーは、最初に脚本を読んだ時、映画化すること自体、ハードルが高い内容だと感じたそうだ。

リリーが演じたのは、沖縄で貝を兎集しながら暮らす、盲目の貝類学者役。彼が、島に流れ着いた女・いづみ(寺島しのぶ)の奇病を貝の毒で治療すると、それを知った人々が、次々と島に押し寄せてくる。橋本は、奇病に侵された有力者の娘・嶌子(しまこ)役を演じた。

「いちばん実現しないパターンの企画が来たなと思いました。これを本当に映画として撮るの?という驚きがありましたが、本当に撮るのなら面白いなあと」と不可思議な表情で語るリリー。橋本は「私がお話をいただいた段階では、リリーさんと池松(壮亮)さんが決まっていて、信頼感抜群の布陣だったので、参加したいと思ったんです」と明かした。

リリーにとっては、石井輝男監督の遺作である『盲獣vs一寸法師』(01)以来15年ぶりの単独主演映画となった。「主演だとけっこう長い時間拘束されるので、気が重いなあとは思いましたが、こういうカルト映画の主演の話をもらい、俺が断ってどうするんだと。サブカル上がりがやる役ですから」。

橋本は、脚本を読む前に原作を読んだと言う。「原作はすごくファンタジックで、自分が演じた嶌子の心情の描写もありましたが、脚本には、嶌子の人間的な描写がなくて。監督が『希望の光に導く役割』とおっしゃられ、実際、すごく超人的な能力をもっているという描写があり、撮影もしました。でも、できあがった映画では、それらがすべて排されていました」。

リリーも「もっと漫画感があったんです」と言う。「ただ、原作にも脚本にも、お客さんを呼ぶキャッチーな部分がない。でも、こういう映画もなきゃいけない。泣けるとか、笑えるとかいう要素が全くないけど、映画という映像のなかの1つなんです」。

橋本は、本作に出演した経緯についてこう付け加えた。「私のやっていることは、実質的に必要なのかと言われたら、何も言えないような職業だなと思っています。でも、やっぱりこういう文化に触れるのは、豊かなことだと実感します。こういう作品がなくなっていくと、ならされてしまう。ならされない人たちが、どんどん消えていってしまうのは、やっぱり怖いことだなと。自分が堕ちていかないために、私もそういう土台作りにできれば参加したいんです」。

リリーも「坪田監督は、元々が比類なきものを作りたいという思いがあった」と納得している。さらに、自身も出演した『女が眠る時』(2月27日公開)のウェイン・ワン監督のエピソードを紹介してくれた。「僕もこの映画に1シーンだけ出ましたが、相当、難解です。でも、ハリウッドの監督は、そういう映画をそう思わせないテクニックを持っているんです。まず、上映前に、けっこうストーリーについてしゃべる。そして、終わった後もまた、たっぷりストーリーについてしゃべるわけ。そうすると、想像をかきたてるんです。だから坪田さんもウェインくらい作品についてしゃべった方が良いかなと」。

橋本も「是非、しゃべってもらいましょう」と笑顔でうなずいた。

リリー・フランキー、橋本愛や、寺島しのぶ、池松壮亮という、日本が誇る映画俳優たちの競演が観られる『シェル・コレクター』。セリフよりも、彼らが体現した映像が、坪田監督の語りたかったものを力強く訴えかける映画となっているので、気合を入れて臨んでほしい。【取材・文/山崎伸子】

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