妻夫木聡と蒼井優が、互いに色気をほめ合う！

常に日本映画界のフロントランナーとして風を切ってきた妻夫木聡と蒼井優。2人が、山田洋次監督作で、『東京家族』(13)に続き、『家族はつらいよ』(3月12日公開）でも、恋人役を好演した。すでに何度も共演を重ねてきた2人にインタビューし、山田組の撮影エピソードや、キャリアを積んだいま、互いに感じている印象について聞いてみた。

『家族はつらいよ』では、妻夫木たちではなく、橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中嶋朋子、林家正蔵と、『東京家族』で家族を演じた主要キャスト8人が全員続投した。今回は、突然湧いて出た、両親の熟年離婚問題を軸にした家族の一騒動が、コミカルに描かれる。

妻夫木「これだけ同じキャストで違うものをやれることは、まずないので、すごくうれしかったです。また、山田監督が、久しぶりに『男はつらいよ』のような心温まる喜劇を撮ってくださること自体にすごく感激しました」。

蒼井「私もうれしかったです。この8人のバランスが大好きで、とても良いなあと思っていたので。山田さんにダメだと思われていたら、再採用はなかったと思うので」。

2人は勝手知ったる共演者同士だが、時を経たいま、お互いをどんなふうに見ているのだろうか？

妻夫木「前に何度か一緒に取材を受けた時、優ちゃんが『僕が陽で、自分が陰だ』と言っていて。でも、僕は全く優ちゃんに対して、同じ思いだった。僕は陰なタイプではないかもしれないけど、実はすごくネガティブなので。家へ帰って落ち込んだり、1人でゲームをやっているような暗い部分も持ち合わせているので」。

蒼井「妻夫木くんは、初めて会った時から、同じニオイがする人でした。失礼な話ですが、5つも年上なんです」。

妻夫木「敬えよ(笑)」

蒼井「敬ってはいるけど、それが一周しての妻夫木くん。ほら、好きすぎる役者さんのことを、呼び捨てしたりするでしょ。そんな感じです。すごく尊敬していますし、今回の『家族はつらいよ』に関しては、ずっと引っ張っていってもらいましたし。私は、妻夫木くんが打ってくる球を打ち返すだけで良かったです」。

2人の言葉から、一朝一夕ではない、深い信頼関係が伝わって、くる。

妻夫木「優ちゃんは良くも悪くも、年齢関係なしに思ったことをすぐに口に出す人です。橋爪さんとかにも平気で何でも言っちゃうけど、悪気がない。裏表がないからこそ、気に入られるし、山田さんも、そんな人の良さも含めて好きだと思います。それに、かわいいと言われながら育ってきているけど、変に色気もあるんです」。

蒼井「あ、そのへん、太文字で書いてもらって良いですか？」

妻夫木「ふとした瞬間に色気を放つ瞬間があり、そういうところに男の人はポロッといっちゃいがち。ギャップですね。かわいいと言われている人が、色気みたいなものを出した時、ドキっとするんです」。

蒼井「今度、私が色気を出せていたら『いま、出ている』と言ってください」。

妻夫木「ごめん。いっしょにいる時は、一切出てないから(笑)。芝居とかだよ」。

蒼井「あ、本番中か。それじゃ、私じゃないね(笑)。でも、妻夫木くんも、最近、色気が出てきたみたい」。

妻夫木「ハハハ。それって、色気のほめ合い？でも、優ちゃんは、かなりオールマイティーな人だよね。これ以上、色気を出さないでもらっても良いですか？」

蒼井「いやいや、そこはもうちょっと身につけていきたいです」。

妻夫木「『るろうに剣心』でも、色気担当だったよね」。

蒼井「あれは、厳しかった。でも、できないことを知っていくというのも成長の1つとして大事だなと思っています。あっちへ行ってはいけないと思ったけど、撮影自体は楽しかったです。通常は、友達が少ない子の役が多いですね。でも、山田組では、底抜けに良い子の役をやらせていただけるので、調子に乗っちゃう」。

妻夫木「橋爪さんにもずるいと言われているよね。まあ、良いけど(笑)」。

肩肘張らない自然体なやりとりで、いまの素直な思いを語ってくれた2人。『家族はつらいよ』でも、絶妙なコンビネーションを見せているので、お楽しみに。【取材・文/山崎伸子】