多部未華子、『あやしい彼女』の恋の相手に「油断できない」
見た目は20歳だけど、中身は73歳のおばあちゃん!? そんな突拍子もない設定のヒロインを、とてもチャーミングに演じた多部未華子。『あやしい彼女』(4月1日公開)で、名コメディエンヌぶりを発揮した彼女にインタビュー!
頑固・毒舌・おせっかいの三拍子が揃ったおばあちゃんのカツ(倍賞美津子)が、ある日写真館で写真を撮られた瞬間、20歳の自分に若返ってしまう!カツは、失われた青春を取り戻そうとして別人・大鳥節子(多部未華子)となり、人生を謳歌していく。
難しい役どころだが、多部はオファーを快諾した。メガホンをとったのは、『謝罪の王様』(13)の水田伸生監督だ。「オリジナル版の物語が大好きでしたし、水田監督の現場がとても素敵だと伺っていたので、是非出演したいと思いました」。
コメディの演出には定評がある水田監督だが、どのように笑いを演出していったのか?「まずは自由に演技をさせてくれます。それから、この台詞ではこういう動きをしてみようとか、もっとオーバーにしてみようと、監督が演出してくださるんです」。
後半で、小林聡美が演じる娘と節子が再会するシーンが実に印象深い。「監督は面白いシーンにしてもシリアスなシーンにしても、空気を作るのが上手な方です。だから、スタッフさんも含め、役者にとって常にパーフェクトな状態を作ってくださいます。確かに大事なシーンでしたが、あとはもう私と小林さんのやりとり次第なので、失敗しても誰のせいにもできないという緊張感はありました」。
今回の現場は、多部にとってとても心地良かったようだ。「何回もテストを重ねる監督もいれば、すぐに本番に行く監督もいます。また、常に役者さんと共に段取りをする方もいれば、役者さんは必要最低限付き合ってもらい、あとはスタッフで何とかします、という方もいます。水田監督は、役者に負担をかけないようにしてくださいますし、テストの回数もすごく少ないです。笑いの部分もあまり作り込まず、計算ができないくらい、すぐに本番に行くのですが、私はそこが好きでした」。
要潤とのやりとりの自然体なシーンも、そういう絶妙な間が切り取られている。「あのシーンもテストを1回、本番を1回で終わったので、2回だけしかやっていません。もちろん、事前に要さんと台詞合わせをしていないので、本当に現場で出たものです。あのシーンも、とても良い緊張感がありました」。
ちなみに、恋の相手となる要潤演じる小林プロデューサーについては「優しくて、良い人ですよね。でも、結婚していないから、きっと何かがあるんですよ。絶対に何かがあるから、裏を見るまでは油断しちゃいけないという感じです」と苦笑い。
最後に、本作の見どころについて聞いた。「どんな世代の方が観ても、心に留まるポイントが絶対にあると思います。ベースがコメディだからまずは楽しんで観てほしいです。観終わった後、前向きに劇場を出られる作品だと思うので」とアピール。
威勢良くたんかを切ったり、思い切り笑ったり、涙したりと豊かな表情がたまらないヒロイン節子。キラキラ光る多面的な多部未華子をじっくりと味わってほしい。【取材・文/山崎伸子】